主要農作物種子条例の制定

2019年6月議会

 政府は、TPPの国会批准を強行し、日欧EPAではTPP水準を上回る市場開放を受け入れるなど、際限ない農産物の自由化の道を突き進んでいます。  

 国内政策でも、大規模化やコスト削減を押しつけ、農政改革と称して農地、農業委員会、農協など、戦後の家族農業を支えてきた諸制度を壊してきました。  

 一昨年の国会では、規制改革推進会議の答申に基づいて主要農作物種子法の廃止を、わずか12時間の審議時間で成立させました。また、2018年産から米は完全に市場任せにして、国内農業を自由競争に投げ出すという農政を進めています。  昨年4月1日に主要農作物種子法が廃止されたのを受けて、本県では要綱対応によりこれまでと何ら変わりなく取り組んでいくので心配ないとしています。  

 地方分権一括法でも、国の機関委任事務もなくなり、自治事務と法定受託事務に整理され、農水省等の国からの指示、通達は廃止されました。農水省次官からの各都道府県への通知は、法律的には単なる技術的助言にすぎません。法的拘束力はありません。  

 県での要綱作成は、これは単なる知事部局内の規則にすぎず法的拘束力はありません。  

 県議会の議決を経た「種子条例」に劣ることは論を持ちません。  県条例にすると、県議会を通じ適正手続きを経て成立しますと、条例改廃をするには県民の意思が反映され、議論の対象となります。

  しかも、国や県が実施してきた米、麦、大豆などの優良品種の普及と価格安定に影響が出ないのかといった懸念は本当にないのでしょうか。  

 穀物メジャーと呼ばれるアメリカのカーギル社や、遺伝子組み換え作物で有名なモンサント社などの巨大民間企業が本県農業にも参入し、高価な特許料の徴収や遺伝子組み換え種子が拡大するのではないかとの懸念が徐々に広がってきています。

 遺伝子組み換え(GM)品種の流入や海外の種苗大手による種の支配、種子の価格つり上げは断じて認められません。国会に野党で共同提出している「種子法復活法案」の一刻も早い成立が待たれるところですが、当面、新潟県の「新潟県主要農作物種子条例」をはじめ北海道や埼玉、兵庫などの9道県の独自条例制定の取り組み、さらには中四国で先陣を切って独自条例を制定する方針を固めたと聞く鳥取県にならい、種子の安定供給に向け県・農業団体・生産者の役割を明示し種子の生産計画策定と十分な予算措置、原種・原原種の備蓄体制などを明記した「主要農作物種子条例」の制定をすべきだが、知事の所見をお伺いします。

答弁

 県では、種子法廃止に伴い発出された農林水産事務次官通知に沿って、米・麦・大豆の優良品種の決定や原種供給などの具体的な手続き、処理基準等を要綱に定め、必要な予算を確保し、JAや種子生産農家と連携して、優良種子の計画生産と安定供給に取り組んでいるところです。

 ご指摘の巨大企業の参入による価格のつり上げ等については、種子法廃止の際に政府が万全を期すべき事項として「種子が適正な価格で国内で生産されること」、「特定の事業者による種子の独占によって弊害が生ずることがないよう努めること」との附帯決議がなされています。

  これに基づき、国において公益に反しないよう適切な措置を講じることとされていることから、ご懸念は当たらないものと考えています。 県としては、国やJA、種子生産農家と連携しながら、要綱に定めた取組を着実に実行することにより、県の役割を適切に果たすことができることから、新たな条例の制定は考えていません。