上関原発建設計画

2019年6月議会

 2月県議会定例会における私の質問に対する答弁は、「…公有水面埋立法第8条に定める補償は既に完了しており、その補償後に漁業を始めた方がおられたとしても、公有水面埋立法上は、年月の経過により、改めて補償をする必要はありません。」でした。  

  そこで改めて反論し、見解を伺います。  第一に、埋立免許は「事業者と公の関係」においてなされる手続きであり、「事業者と民の関係」には何の関連もないということです。  中国電力は、2008年10月22日に埋立免許を取得しました。しかし、公有水面埋立法は「埋立事業者が埋立免許を得ても埋立で損害を受ける者に補償しなければ埋立工事に着工できない」旨規定しています(第8条)。 上関原発では、祝島の漁民が漁業補償金の受領を拒否し続けているために、中国電力及び山口県漁協は、なんとかして祝島漁民に補償金を受け取らせようと画策してきましたが、祝島漁民がいまだに受領を拒み続けているのです。  祝島漁民が補償を受け取らない限り、埋立工事に着工できない。これは「事業者と民の関係」であり、「事業者と公の関係」において埋立免許が再延長されたところで、それとは全く関連なく存在し続ける関係です。この点をまず押さえておきたいと思います。

 第二に、中国電力が上関原発埋立を実施できる権利が既に消滅していることです。  公有水面埋立法が「埋立事業者が埋立免許を得ても埋立で損害を受ける者に補償しなければ埋立工事に着工できない」旨規定しているのは、埋立事業により損害が発生し、損害を受ける者がいるからです。埋立事業により損害を受ける者と補償契約を交わし、補償を支払って、初めて損害を与える埋立事業を実施できるのです。  ところが、中国電力と漁協等との補償契約は、2000年4月27日に交わされたものです。2000年4月に交わした補償契約で補償を支払ったのに、それから20年余り経って埋立事業を実施できるものでしょうか。  もちろん、答えはノーです。2000年4月時点で漁業を営んでいた者と2019年時点で漁業を営んでいる者とがすべて一致しているはずはありません。2000年当時漁業を営んでいても、2019年時点では廃業したり、亡くなったりしている漁民は何人もいます。逆に、2000年当時漁業を営んでいなくても、その後漁業を営み始めた漁民も何人もいます。 ですから、中国電力が今後上関原発建設のために埋立を実施するには、埋立事業実施時点において漁業を営んでいる漁民に新たに補償しなければならないのです。

 第三に、公有水面埋立法に基づくだけでも、以上のように、上関原発埋立実施には新たな漁業補償が必要と言えるのですが、さらに民法の「時効」の規定があります。  中国電力が、漁業に損害を与える埋立事業を実施できるのは、補償契約に基づいています。中国電力が補償を支払うことと漁民が埋立を認めることの両方が補償契約に規定されているので埋立を実施できるのです。いいかえれば、中国電力が埋立を実施できる権利は、契約に基づいて契約の相手方に要求できる債権なのです。 ところで、民法によれば債権の消滅時効期間は10年です(167条1項)。契約を交わしても、契約に基づく債権を10年間行使しなければ、その債権は時効により消滅するのです。したがって、2000年4月27日補償契約から19年以上も経った今、中国電力が上関原発埋立事業を実施できる権利は、とっくに消滅しているのです。  

 以上、2月議会での答弁に反論したうえで、改めて次の5点について伺います。

①公有水面埋立法第8条が、埋立工事に着手するに先立って埋立事業者が漁業権者に補償すべきことを規定しているのは、何故か。埋立工事が漁業権を侵害するからではないのか。

②漁業補償契約に基づき漁業補償を支払えば、なぜ埋立工事に着手できるのか。 漁業補償契約が、⑴埋立事業者が漁業権者に補償する、及び⑵漁業権者が埋立事業者の埋立事業に同意する、という二つの項目を含む双務契約として結ばれるからではないのか。

③埋立事業者が埋立事業を実施できる権利は「漁業補償契約に基づく債権」にあたると考えられるが、如何か。

④ 漁協は加入脱退自由の団体であるから、漁協に加入しない漁民が存在し得る。 従って、漁協が契約当事者であるような漁業補償契約の効力は、漁協に加入していない漁民には及ばないことになるが、如何か。

⑤債権の消滅時効期間は10年である(民法第167条1項)。 従って、2000年4月27日に中国電力と共同漁業権管理委員会・四代漁協等の間 で結ばれた補償契約に基づく中国電力の埋立事業を実施できる権利は、既に消滅しているのではないか。  

 以上の5点について、明快な答弁をお願いします。  

 次の質問は、6月10日に中国電力は公有水面埋立免許の工事竣功期間伸長許可申請書を県に提出。「新規制基準に基づいて厳しくなった断層の評価に対応するために海上ボーリング調査が必要なことが分かった」「海域のボーリング調査が終わるまでは埋め立て工事が実施できない」(毎日新聞報道)として、埋立工事に先立ち、このボーリング調査期間に6ヶ月を要するので3年6月の期間伸長が必要としている。  

 そこで質問は、福島原発事故を受けての新たな原子炉設置許可申請に必要な詳細調査であるのなら埋立以前の話で、これは「一般海域の利用に関する条例」に基づく「一般海域の占用許可」を受けなければならず、公有水面埋立とは別の許認可にあたり、どさくさ紛れのでたらめな工事竣功期間伸長許可申請ではないのか。この点の答弁を求めます。

 6月7日に経産省と原子力規制委員会への申し入れに参加して分かったことは、「原発の新増設は想定していない。根拠は国会答弁等のみで、法的根拠はない」「新規制基準は既設原発のであり、新設の基準は検討すらしていない」ということでした。  

 ようするに、「政府のエネルギー政策は、2030年に30数基程度の原発を動かし、総電力の20~22%を原子力で賄う方針だが、東日本大震災以降、再稼働したのは9基で、新しい原発建設も世論の反発を意識して、政治的に議論を先送りしている。」ということです。  

 そこで、10日に出された中電の申請については、国が原発新設は想定しておらず、新設の新規制基準は検討すらしていないと言っており、したがって、本体着工は絶対にあり得ないのだから、「法律にのっとって適切に審査をし、判断する」ということではなくて、県内世論は上関原発反対の声が多いのを勘案し、知事の政治的判断で、今回の中電申請を不許可にしても政府の方針に沿った処分で、何ら問題なく、知事の英断を求めたいと思いますので、所見をお伺いいたします。

答弁

 上関原発建設計画に関し、漁業補償についての数点のお尋ねにお答えします。 まず、「着手前に漁業者に補償すべきこと」及び「漁協に加入していない者に対する補償の効力」については、これまでも答弁していますとおり、公有水面埋立法上、埋立工事の着手に当たっては、埋立工事の施行区域内の漁業権者に対する補償が必要ですが、漁業権者である山口県漁業協同組合への補償はなされており、その上で、事業者は、埋立工事に着手しています。  

 また、埋立を行う権利は、あくまでも公有水面埋立法の免許に基づくものであり、その他の公有水面埋立法に基づかないお尋ねについては、いずれも、お答えする立場にありません。

 次に、この度の工事竣功期間伸長許可申請に係る2点のお尋ねにまとめてお答えします。 この度の延長申請については、現在、申請内容を精査し、審査を行っているところであり、どこまでも法令に従って、適切に対処してまいります。

 まともな答弁になっていない。安倍政権の「原発回帰の本音」に忖度した山口県知事の意向に、これまた忖度した答弁で話にならない。