2020年2月定例県議会・反対討論

皆さん、お疲れさまです。社民党・市民連合の中嶋光雄です。

 私たちの会派は、提案されています議案の第1号、14号、18号から21号まで、37号、49号、62号、65号に反対をします。あとの議案は賛成をします。

 そして、請願第1号を不採択とすることに、反対をいたします。

では、順次反対の理由、意見を述べてさせていただきます。

 まず、議案第1号、令和2年度一般会計予算及び第49号、令和元年度一般会計補正予算(第4号)に反対し、一括して意見を述べます。 

予算規模は、6741億円と前年度比113億円の減、1.7%減ですが、国の経済対策に呼応した2月補正予算と一体的編成後の予算規模は、前年度比27億円増、0.4%増と、ほぼ前年度並みの予算規模になっています。

国の「15ヶ月予算」の考え方を踏襲した予算編成が続けられています。

国の15ヶ月予算については、景気対策などの面で有効であるとの評価がある一方で、補正予算本来の役割から逸脱し、通常の予算として盛り込むべきものを比較的注目度の低い補正予算として計上することにより必要な議論を避けているのではないかという批判も当然あります。

この「15ヶ月予算」について、深い議論・考察が行われていない気がしています。

『特に、国の補正予算の内、山口県に関わりのある「総合ミサイル防空能力の強化(弾道ミサイルなどの多様な空からの脅威に対する対処能力の強化に必要な装備品等の整備のための経費)に1456億円」が盛り込まれています。

また、令和2年度防衛省予算には、特定の配備地を前提とする経費は計上しない。とのカッコ書き付きで、イージス・アショア関連経費(129億円)として、垂直発射装置(VLS)の取得(115億円)と調査経費等のその他関連経費(14億円)が計上されています。さらには、宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力獲得・強化(506億円)の中に、宇宙状況監視(SSA)システムの取得も盛り込まれています。

つまり、国は、着々と、萩市・阿武町へのイージス・アショア配備、そして山陽小野田市への宇宙監視レーダーの配備を準備している。と言うことだが、これらについて、県の予算でないとは言え、知事は議案説明にあたり、一言も触れられませんでした。

言いたいことは、国策に対する県知事の基本的姿勢について、我が会派は、どうしても納得することができないため、本県の施策の根幹を裏付けるものである一般会計予算および最終補正、決算には反対し続けてきました。

 安倍首相自らが大勢の財界人を引き連れて海外展開した原発ビジネスもすべて挫折しています。

安い、安全という原発神話は崩壊し、世界では通用しなくなっているのですから当然の帰結と言えると思います。

こんな状況のもとで、知事がなぜ多くの県民の立場に寄り添って、上関原発建設Noの決断を示されないのか、知事ならできるのです。

 一方、地方自治の原則に立って、上関町の政策選択を尊重すると言われながら、阿武町のイージス・アショアNoの政策選択については、あえて無視をされています。

 このダブルスタンダードぶりに、国策には事実上無条件で協力する知事の基本姿勢があらわれています。本当に残念です。米軍岩国基地問題への対応ぶりも全く同様です。』

では、県の予算案についての問題点をいくつか申し上げます。

 一般質問で、これまでも取り上あげてきましたが、子供の医療費助成について、結果として市町に負担を押し付けることになっている県の事業について今回も見直しがされていません。

 さらに、朝鮮学校への補助金カットには、何の法的根拠もありません。これでは、県民の差別や偏見を助長させる官製ヘイトだと批判されて当然です。来年度の途中からでも、補助金復活の決断をしてください。

 また、後ほども指摘しますが、国民健康保険制度の改革について本来の役割を果たすものとは言えないと考えます。

 また、県民にとって身近で、要望の多い県道補修や河川改修費などの生活関連予算は、とうてい充分とは言えません。

 しかし、我が会派としては、評価できる事業も中にはあると考えています。

 例えば、知事も議案提案にあたり、「交流を促進する地域交通ネットワークの充実を図るため、中山間地域等において、AI等を活用した新たな地域交通モデルの形成に向けた取組を進める。」と言われました。

 たまたま昨日の新聞に、「運転免許返納 最多60万件」(高齢者事故続発で急増)の記事を読みました。私も、今定例会の一般質問、そして商工観光委員会でもお尋ねしましたが、

世界でも例のない長寿国になっている我が国にとって、まさに、この「新たな地域交通モデル形成推進事業」は、先駆的な事業だと評価していますし、全国のモデルになるような事業に育てていただきたいと願っています。

ただ、そうはいっても、国の意向に沿ってばかりの知事の政治姿勢が、色濃く反映された予算等になっていると思います。

 来年度は、多くの県民世論の立場に立ち、率直な知事の肉声が聞かれることを期待し、この2議案には、反対をいたします。 

続いて、議案第14号、令和2年度国民健康保険特別会計予算および議案第62号、令和元年度国民健康保険特別会計補正予算に反対し、一括して意見を述べます。

 国民健康保険の運営主体が都道府県となり、安定的な財政運営や事業実施のために制度の安定化を図ること、市町が、引き続き保険給付、保険料率の決定、保健事業の運営を担うことになって2年になりましたが、国民皆保険制度を支える国民健康保険の本来の役割を果たせる改革であったのか疑問に思っています。

 国民健康保険加入者の年齢構成や所得実態、高い保険料算定の仕組みなど、かねてから課題となっている抜本的な改革にはいまだ至っていません。国保料滞納問題の背景には、こうした実態があり、制裁の強化ではなく、社会保障としての国民健康保険の制度運営が重要です。来年度予算にもこのような視点が見えず残念です。

 また、国庫補助割合の増額と自治体で行っている医療費助成制度減額ペナルティの廃止、子どもの均等割り保険料の低減などは国への要望に止まったままです。

 本県が、平成21年7月から乳幼児・ひとり親家庭・重度心身障害者に対する「福祉医療費助成金」に患者負担を導入したことから、各市町では住民からの切実な願いを受けて、県が支出しなくなった助成金を補填して無料化を継続している上、さらに助成対象年齢などを拡大し続けている状況を踏まえれば、せめて、中学生までの減額ペナルティ分の補てんくらいは、市町に県はすべきです。

 県は、国に対し、財政基盤の強化のために削減し続けてきた国庫負担をもとに戻し、財政支援を求めるべきです。強く要望しておきます。 

続いて、議案第18号から21号の4議案は、知事等の損害賠償責任の一部免責。及び地方独立行政法人の理事長等の損害賠償責任の一部免除に係るもので、そもそも地方自治法の一部改正および地方独立行政法人法の一部改正に伴うものであり、性格を同じくするものであることから、一括して反対します。

反対の理由は、住民訴訟の損害賠償責任の見直しで、軽過失の場合の賠償責任額の限度を定めることを可能とするもので、「長」等の個人の給与等の額のみを基準としており、反対です。 

これらについては、住民訴訟が持つ違法な財務会計行為に対する是正効果や抑止効果までが減殺されることがないよう、県等が被った損害額をも基準として、県における一部免責の額を設定すべきと思うからです。

具体的には、本県で起こると思っている訳ではありませんが、この免責・免除を認める条例が制定されれば、地方公共団体等に実際に莫大な損害が生じているにもかかわらず、実際に回復される損害が全額回復されず、場合によっては、回復される額は実際に生じた損害の数十分の一に過ぎないこととなります。

これでは、住民訴訟の持つ違法な財務会計行為に対する是正効果が著しく減殺されることになる。と危惧するからです。 

議案第37号は、山口県学校職員定数条例の一部改正です。反対をいたします。

 高等学校、中等教育学校、特別支援学校、小中学校の教職員が、特別支援学校で高等部移転のため教職員4名増、また小中学校で教職員20名増の微調整を含むものの、児童生徒数が減るとして、今年度を上回る179名もの定数減となります。

 平成30年2月定例会で、私は、教員の働き方改革に係る事業についての質問をしました。県教委の答弁は、「部活動の負担軽減などを図り、平成29年度からの3年間で、教員の時間外業務時間を平成28年度比で30%削減することとしています。」でした。つまり、今年度までに30%削減すると言われました。

 ところが、今定例会において、共産党の藤本県議が、教員の時間外業務の削減に向けた進捗状況などを質されたところ、答弁は、2017年度から3年間で時間外業務時間の30%削減を掲げ「学校における働き方改革加速化プラン」に取り組んだものの、今年1月末現在で16年度と比べ中学校で4.9%減、県立学校で10.6%減にとどまり、小学校では0.7%増えた。とし、「目標達成に向けて厳しい状況にある」と答弁されました。

こうした現状を踏まえたときに、ここ数年連続しての定数削減条例には、到底、承服しかねます。

子供たちが減り続けているからといって、やっと教職員の働き方改革が大きな課題となっている今、機械的に教職員定数を減らすべきではありません。

また、新年度から、「県内全ての公立学校がコミュニティ・スクールに!」「教育のICT環境の整備」を掲げられている訳で、その実現のためにも教職員定数の削減には、反対です。

 長年叫ばれている子供たち一人一人への行き届いた教育のためにも、教職員を減員すべきではありません。

 また、先進諸国で最低クラスの教育予算の拡充を政府に要請されるよう、引き続いて知事と教育長にお願いをしておきます。 

議案第65号、令和元年度の建設事業の市町負担金の変更について、反対します。

 この議案については、我が会派は反対し続けています。

 折角、県が立派な道路などをつくってくれた。と喜んでいたら、事業によってその負担割合は異なりますが、市町に負担を請求していた。おかしいです。

これまで何度も申し上げていますが、地方分権のかけ声とともに、地方六団体・全国知事会あげて取り組み主張されている国の直轄事業負担金廃止問題は、残念ながら近年、その声が全く聞こえてきません。市町への負担金は、この問題の延長線上の課題でもあります。

 財政事情が厳しいのは、県内市町共通の課題です。知事は、国の負担金制度廃止について強く行動していただくことを要望し、本議案に反対をいたします。 

次に、請願第1号、「山口県の実情に見合った持続可能な医療の提供を求める意見書を求めることについて」の不採択について、反対であります。

賛同をお願いしたい立場で意見を述べさせていただきます。

本請願は、県内13の公立・公的病院の存続のために「再検証」の要請に対して国への意見の提出を求めるものであります。

請願の要旨については、ご覧いただいているとおりでございますので、少し違った観点から、私なりの意見を述べさせていただきます。

新型コロナウイルスが日本にとってこんなにも大きな脅威になってしまった原因の一つとして歴代政権の医療リストラ策がある。日本社会と日本の医療の感染症に対する脆弱さは政策によって生み出されたものだ。と専門家が指摘しています。・・・㊟1

例えば、全国の保健所は1990年には850箇所あったが現在は472箇所(45%削減)。山口県においても15箇所が、7箇所の環境保健所に統合されています。それと下関市保健所の8箇所のみになっています。

感染症病床は1万床あったのが今は1900床を切っているそうです。

今、公立・公的病院が名指しで再編・統合や病床数の削減が強要されようとしています。

公立病院は効率が悪いなどと言われるが公立病院は感染症の病床を常時空けておくなど尊い役割を担っています。新興感染症の患者を受け入れた病院では、感染症拡大を防ぐために病床の一部を使用できなくなり、数千万円単位の減収を余儀なくされます。

民間病院は、赤字が出たらつぶれます。だから、自治体からの繰入金が認められる公立病院が「最後の砦」となり、へき地医療や救急医療、災害医療そして感染症病床の常時確保などに取り組んでいます。公的な病院もありますが、公立病院は特に、市民の厳しい目にさらされていますが、赤字でもやらざるを得ないのです。

こうした背景を踏まえるならば、請願第1号で訴えておられることは至極当然です。

従いまして、紹介議員の一人として、本請願を不採択にするのではなく、採択すべきにご賛同くださいますようお願い申し上げる次第でございます。 

以上で、議案・請願に対する討論を終わります。

 最後に、今年度で退職される参与員の皆さん、職員の皆さん、本当にご苦労様でした。

皆さんの、県民・県政への長きに渡るご尽力に、心から敬意を表します。

どうぞ、次なる新たなステージでも、それぞれの持ち場で御活躍されることを、そして元気が一番です。御健勝を心からお祈りをいたします。

㊟1…

いま病院が危ない! 感染症病床は20年前の約半分に、厚労省は問題を事実上放置

池田正史,多田敏男2020.4.3 11:30週刊朝日#病院

 

 

週刊朝日2020年4月10日号より

私たちができる自衛術 (週刊朝日2020年4月10日号より)

勢いが止まらない新型コロナウイルス。感染症に対応できる病床の不足など、医療の弱点が浮かび上がってきた。現場の医師や看護師は奮闘しているが、人手不足は深刻だ。弱点を指摘されても厚生労働省が事実上放置してきたことなど、国の問題も発覚している。いま病院が危ない。

【コロナショックを乗り切る!私たちができる自衛術とは】

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「まだ調査の途中でまとまっておりません」

厚労省の宮嵜(みやざき)雅則健康局長は3月3日の参院予算委員会で、小池晃参院議員(共産党)の質問にこう答えた。感染症対策について、総務省行政評価局から問題点を調査・改善するよう求められていたのに、2年以上対応できていなかったのだ。

感染症患者は、専門家がいて設備の整った「特定感染症指定医療機関」(国指定)や「第一種、第二種感染症指定医療機関」(都道府県指定)に、入院する決まりだ。

国や都道府県は一定の地域ごとに専門家の医師や入院ベッド数(病床数)を確保し、いざというときに備えることになっている。

ところが、この指定医療機関において、医師や病床数の不足や、院内感染対策の不十分さが相次いで判明。計画通りの患者の受け入れを危惧するところが、調べた44機関のうち10機関(約23%)に上った。行政評価局は2017年12月、全国の指定医療機関の実態調査をして不備があれば改善するよう厚労省に求めた。

厚労省は都道府県を通じて指定医療機関に点検を要請し、調査結果は18年中をめどに整理すると、行政評価局に18年7月に報告した。だが今になっても調査結果は報告されていない。加藤勝信厚労相は参院予算委で次のように苦しい説明をした。

「調査をしていないのではなくて、具体的な結果を踏まえてもう一度精査をしている」

今回のコロナショックでは、指定医療機関の設備や人材不足など、様々な課題が判明している。もし行政評価局の求めにきちんと対応していれば、より充実した体制ができていたはずだ。

延期が決まった東京五輪を巡っても、会計検査院が感染症対策について19年12月に改善を求めていた。外国人選手団を受け入れる自治体が感染症リスク評価を十分できていないと、指摘されたのだ。

このように感染症への準備不足は政府内でも問題になっていたが、お金がかかることもあって整備は進んでこなかった。

そもそも国は、感染症の患者が減ったことなどを理由に、指定医療機関の病床数を絞ってきた。病床数は18年で1882と約20年前(1999年)の半分強となっている。

医師も全体的に足りない。日本感染症学会によると、300床以上の約1500病院だけでも常勤の感染症専門医が約3千人は必要なのに、半分程度しか確保できていないという。同学会は専門医の育成を訴えてきたが、09年の新型インフルエンザの流行などもあったのに、国の対応は遅れ気味だ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は急いで病床を増やそうとしている。

指定医療機関の対応病床だけでは足りないので一般病床も活用することなどで、2月末時点で5千床以上を確保できたとしている。現在の約2千床の倍以上だが、感染がさらに拡大すれば、患者があふれることになる。

政府は専門病棟の設置など、さらなる対策を取ろうとしているが、設備や人材をすぐに集めるのは難しい。都内の大病院の幹部はこう明かす。

「感染症患者を受け入れるには専門的な知識が必要で、病院内のルールや体制も整えなければならない。指定医療機関でないところでは通常2~3年はかかります」

新型コロナウイルスの感染者増で、医師や看護師には大きな負担がかかっている。日本の医療は質が高いとされているが、現場の余力は限られているのだ。

日本の医師数を人口1千人当たりでみると2.43人で先進国の中では少ない。経済協力開発機構(OECD)の加盟国のうちデータのある29カ国中26位にとどまる。医師の総数で見ても、加盟国の平均約44万人に対し約32万人だ。

人手不足は長時間勤務を招く。厚労省によると、勤務医の4割に相当する8万人が、過労死ラインの月平均80時間を超える時間外労働を強いられている。年間勤務日数も35%が300日以上で、1カ月当たり5日の休みを取るのがやっとだ。医師が過労死するケースも後を絶たない。

『本当の医療崩壊はこれからやってくる!』の著者で、済生会栗橋病院(埼玉県久喜市)元院長補佐の本田宏さんは、こう警鐘を鳴らす。

「医師は一人何役もこなさなければならない。本人への負担が大きいのはもちろん、医療の質や安全の確保が難しくなるなど患者にも影響をおよぼします」

国も医師を増やそうとしているが、職業としての地位が弱まるといった反対意見もある。育成には最短でも8年はかかるため、コロナショックのために急増させることもできない。

「国は医療費が膨らむと危機感をあおって、医師や病院数を抑えてきました。政策の間違いを認めたくないでしょうが、日本の医療が弱っているのは事実です。今の現場の状況は兵力も補給も足りず、第2次大戦時のインパール作戦を見ているようです」(本田さん)

感染症対策が十分でないのは、民間病院の経営面の課題もある。

お金をかけて感染症患者の設備や病床を整えても、普段は使うことは少なく重荷となる。民間病院としては、高い診療報酬が見込める生活習慣病の患者を重視しがちだ。

「民間病院の経営を安定させるには、糖尿病や腎臓病など、長期間通ってくれる患者に来てもらうことが必要です。感染症患者の急増に備えて、普段は使わない設備や病床を確保しておくのは民間では難しい」(大手病院の院長)

バブル崩壊以降はムダ削減が叫ばれ、行政の“効率化”が推し進められた。医療関係も例外ではなく、感染症対策を担う保健所や地方衛生研究所の能力は弱められた。

保健所は新型コロナウイルス対策の要となっているが、削減されてきた。17年には全国で481カ所と、90年代前半からみるとほぼ半分まで減っている。94年に従来の保健所法が地域保健法に改められ、担当地域が広がり統廃合が進んだ。

新型コロナウイルスのPCR検査を担っている地方衛生研究所の職員数も、減らされてきた。

PCR検査を巡っては、能力不足が指摘されている。医師が必要だと判断して依頼したのに、保健所から断られるケースも目立つ。厚労省は3月13日に都道府県や指定市などに、保健所の体制を強化するように求めた。

元小樽保健所長で医師の外岡立人さんはこう訴える。

「保健所は本来、地域の公衆衛生を担う大事な組織のはずです。でも日本では、『役所の一部』の位置づけで地位が低い。自治体の指示に従う受け身の姿勢で、自らの判断で体制を強化することもできない。今回のように危機的な状況でも、対応がどうしても遅れてしまうのです」

PCR検査を増やせば多数の感染者が判明し、病院に患者があふれて“医療崩壊”が起きるとの懸念は根強い。検査を積極的にしないことには合理的な面もあるが、医療崩壊を起こさないための準備はできていたのか。厚労省が感染症対策の調査・改善を事実上放置したり、保健所や人員を減らしたりしてきた実情を知ると、十分な対策が取れていたとは言いがたい。

私たちにできることはなにか。

まず、近くの診療所に信頼できる「かかりつけ医」を持とう。診療所は入院設備がないところが多いが、ほとんどの病気には対応してくれる。医師との信頼関係を築けば、急な発熱などで心配なときに電話で相談することも可能だ。重症で大病院に行く場合は、紹介状を書いてくれる。紹介状があれば初診で5千円以上の追加費用もかからない。

病院をうまく利用することも大事だ。一般的なかぜで行っても、処置してもらえることは限られている。まずは静養して体調を見極めよう。特に現在の状況では、重症患者のために、みんなで協力することが求められる。息苦しいなどの危険な兆候があれば、遠慮せずに受診する。

一人暮らしの高齢者は、自宅で弱っている恐れもある。普段から近所で声をかけ合って、体調が悪いときは助け合う。ネットを通じて、家族が離れて暮らす高齢者の健康状態をチェックすることもできる。支え合いを大切にしたい。

緊急時は大病院にすぐに行くこともある。そのときに備えて、健康状態や飲んでいる薬などを普段から知っておこう。健康診断の結果やお薬手帳などの書類も保存しておく。

新型コロナウイルスを巡っては、デマを信じてしまう人もいる。行政や報道機関の正しい情報をもとに、疑問点があればかかりつけ医らに相談しよう。家計が苦しくて病院に行きにくいなど生活面の不安があれば、一人で悩まず自治体の窓口などを活用する。

今後も長引きそうなコロナショック。乗り切るためには私たちも自衛しないといけない。(本誌・池田正史、多田敏男)

週刊朝日  2020年4月10日号