5.放射線副読本について

2020.7.1 6月県議会一般質問

5 放射線副読本について

 東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から9年、増え続ける汚染水、燃料デブリの取り出しや最終処分場の問題、子供の甲状腺がんが増えているなど、問題は山積したままです。

年間20ミリシーベルトを基準に避難区域が順次解除されている現状がありますが、いくら安全と言われても、多くの住民は健康不安から帰還したくてもできずに、避難者は現在でも4万人以上であり、9年たっても、いまだ事故は収束をしていません。

2017年12月に震災復興大臣の下で作成された「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」の指示を取り入れて「放射線副読本」が2018年9月に改訂をされ、全国の小学生、中学生・高校生を対象に配布をされていることを知り、読んでみました。

福島第一原発事故の過酷さや被災者の苦しみには触れず、放射能の健康被害を過小評価し、間違ったデータ比較など、教材としては著しく不適切な内容だと思います。

一方で、放射線の安全性や復興への歩みが着実に進んでいることだけが強調され、子供だけでなく、教える側の現場の教員に対しても誤ったメッセージを伝えることが懸念をされます。

県教委は、「放射線副読本」の記載内容について、どのように認識しておられるのか。県内小中学校、高校への配布や活用の現状とあわせて、伺います。

さらに、いじめの問題が詳しく取り上げられていますが、風評被害をなくすことが、いじめをなくすことにつながるような記述になっており、なぜ避難者となってしまったのか、帰ることを選択できない現状なのか、避難者の実態について真実が語られていません。

放射能は少量なら安全との誤った安全神話を子供たちに刷り込むだけではなく、とりわけ小学生には内容的にも大変難しいものです。配布そのものに疑問を覚えます。

誤解を招くようなこうした副読本については、回収すべきではないかと考えますが、教育長にご所見をお伺いいたします。

副教育長答弁・・・小中学校、高校に配布された放射線副読本についての2点のお尋ねにお答えします。

 まず、記載内容についての認識と配布・活用の現状についてです。

 この本は放射線に関する科学的な理解を深めるとともに、福島第一原子力発電所の事故を一人ひとりが他人ごとにせず、災害を乗り越えて次代の社会を形成するためには何をすべきかを考えるきっかけとなるよう作成されたものと認識しています。

 また、この本は、文部科学省から各学校に対し直接送付されたものであり、その活用については、例えば、理科や社会科等の補助教材としたり、家庭に持ち帰って、保護者と災害について考える機会としたりすることなどが想定されており、各学校の判断に応じた対応がなされているものと考えています。

 次に、副読本を回収すべきではないかとのお尋ねですが、この本は、放射線の基礎的な知識だけでなく、風評被害や差別、いじめなどについても多面的に学習できるよう、国において作成されたものであり、回収する予定はありません。

5 放射線副読本について【再質問】

 滋賀県野洲市では、市議会での質問を受け、福島第一原発事故の被災者への配慮がなされておらず、放射線が安全との印象を受ける記述が多いと判断され、回収したということも聞いている。

先ほど御答弁いただきましたけれども、更にもう一歩踏み込んでいただきまして、県教委として、市町教委への技術的指導として、せめて「副読本だから使わなくてもいいし、配らなくてもいい。今後どう扱うかは、市町教委や学校の判断に任せる。どう扱ったかの調査も県教委からはしない。」ということくらいの内容の通知を発出することを検討できないものか。答弁を受けて、再度お尋ねいたします。

副教育長答弁・・・放射線副読本についての再質問にお答えします。

 滋賀県の野洲市では、原発事故の被災者への配慮がなされておらず、放射線が安全との印象を受ける記述が多いと判断され、回収していると聞いているが、もう一歩踏み込んで、県教委から市町教委への技術的指導として、せめて副読本だから使用・配布しなくてもよいとか、取扱いは市町教委や学校の判断に任せるとか、取扱いについての調査も県教委はしないといった通知を出すことを検討できないのか、とのお尋ねでした。

この副読本については、文部科学省の責任において作成され、直接各学校に配布されたものであり、県教委として、回収やお示しのような通知を行うことは考えておりません。

5 放射線副読本について【再々質問】

 中身については、教員、学校の自主性に任せると、こういう風に御答弁いただいたと理解させていただいてよろしいでしょうか。この点について確認したいと思います。

副教育長答弁・・・放射線副読本についての再々質問にお答えします。

 中身については「教員の自主性に任せる」、そう理解してよいかとの御質問だったかと思いますが、こちらの副読本の活用については、本答弁でも申し上げましたとおり、各学校の判断に応じた対応がなされているものと考えております。