上関原発

2022.6.15一般質問

5月31日、札幌地裁は北海道電力が再稼働を目指す泊原発(1~3号機)の防潮堤(高さは海面から16.5m)について、原子力規制委員会は液状化現象で地盤沈下する可能性を指摘していて、北電はその恐れがないことを相当な資料で裏付けていないなどとして津波対策の不備を理由に運転を認めない判決を言い渡しました。

まさに上関原発も発電所主要建物用地の地盤高を海面から15mの高さまで埋め立てる計画であり、2016年2月定例会で戸倉多香子県議が、「周防大島外入郷地区では、江戸時代後期のマグニチュード8.4の安政南海地震で海抜16mの津波が到達している」との指摘。そして今回裁判が指摘した埋立盛土の地震による液状化現象で地盤沈下する可能性について、公有水面埋立免許の設計概要変更・工事竣功期間伸長許可にあたり適正に審査されたとは言えないのではないか、見解をお聞かせください。

次に、県知事は、2019年7月26日付けで、上関原発建設予定地の埋め立て工事について、①上関原発の原子炉設置許可申請に係る国の審査会合がフクシマ事故以降開催されていない。②電力供給計画で上関原発の着工時期が未定。③県に上関原発本体の着工時期の見通しに関する相談がなされていない。との3点を挙げて、中電に「発電所本体工事の着工時期の見通しがつくまでは、埋立工事を施行しないとこと。」と、文書要請。中国電力㈱社長の回答は「発電所本体の着工時期の見通しがついたと判断できる状況になった時点で、改めて山口県ご当局に相談させていただきます」と、なっています。

 こうした状況には、現時点でも全く変化がない事を確認させていただいた上でお尋ねします。

 国の第6次エネルギー基本計画には、原発の新設・リプレースは盛り込まれなかったので、原子力規制委員会による新規原発の「新規制基準」は策定されず、従って、先述した県知事と中電社長の合意事項の「発電所本体工事の着工時期の見通しがつくはずもなく」、同時並行で県知事により来年1月6日を期限とし県知事により許可されている公有水面埋立免許は自然失効すると思慮するが、見解をお聞かせください。

 最後に、公有水面埋立の免許権者は都道府県知事です。そして、昭和48年6月20日の第71回国会衆議院・建設委員会で、公有水面埋立法の一部を改正する法律案の質疑が行われた会議録に、「本来、許可を与え、工事が進捗していく上において、一体だれがその監督をしておるのでしょうか。この埋め立て工事そのものは。」に、当時の政府委員は、「免許権者である都道府県知事が監督いたします。」と答弁しています。

 そこでお尋ねは、中国電力から今年3月末現在の「埋立てに関する工事の進捗状況報告書」が提出されている筈で、先述した県知事要請からして、当然工事進ちょく率は0%の筈です。公有水面埋立法でいう埋立竣功期限は令和5年1月6日までですが、県知事として残された期日で工事の進ちょくをどう監督されるのか、お聞かせください。

土木建築部長答弁…

上関原発についての数点のお尋ねにお答えします。まず、札幌地裁が泊(とまり)原発に関して指摘した、「埋立盛土の地震による液状化現象で地盤沈下する可能性」について、公有水面埋立免許の設計概要変更・工事竣功期間伸長許可にあたり適正に審査されたと言えないのではないか、についてです。

原発の安全性と公有水面埋立免許とは、そもそも法体系を別にしており、原発の安全性については、公有水面埋立法に基づく審査の対象となっていません。

 これまでの設計概要変更及び工事竣功期間伸長の許可については、公有水面埋立法に従って、厳正に審査し、適正に対処したものです。

次に、発電所本体の着工時期の見通しがつくはずもなく、来年1月6日を竣功期限とした公有水面埋立免許は自然失効するのではないか、についてです。

竣功期限に向けて、どのように対応するかは、事業者において判断されるべきものと考えています。

次に、竣功期限までの残された期日で工事の進捗をどう監督するのか、についてです。

令和3年度までの工事の進捗状況が記載された「埋立てに関する工事の進ちょく状況報告書」が令和4年4月に提出されており、県としては、事業者に対して、これ以外の報告を求めることは考えていません。

再質問…

上関原発、先程は「埋立に関する工事の進ちょく状況報告書」が提出されている筈で、工事進ちょく率は0%の筈ですと申しました。ところが昨日帰りましたら、進ちょく状況報告書がようやく開示されたと聞かされました。

案の定、中国電力は、「平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、当社は同年3月15日から建設予定地における準備工事を一時中断しており、令和3年度の工事進ちょくはない。」と報告していました。

 2011年(平成23年)3月11日は3月県議会の最終日だったようです。因縁を感じます。

 フクシマ原発の大惨事を受け、当時の二井県知事は、3月13日に中国電力に対し、「現地の準備工事について慎重に対応するよう」要請され、中国電力は3月15に工事を中断した。

 これは、二井元知事の要請が、現在まで続いている。ということの証ではないですか。

 私は、行政の継続性を信じています。故に、村岡知事が公有水面埋立免許の延長を許可しながら、一方で、3点の理由をあげ、「発電所本体工事の見通しがつくまでは、埋立工事を施工しないこと。」と文書要請されていることに通じているのではないですか。この文書要請に込められた村岡知事の真意、本心を先ずお聞かせください。

 次に、平成23年6月定例会での二井元知事の公有水面埋立に係る答弁を議事録で確認してみたところ、

「埋立免許は、竣功期間が平成二十四年十月までとなっておりますが、現時点で事業者から報告されている埋立工事の進捗状況から、期間内の竣功は相当困難であると推察をされます。

 法の規定によれば、埋立工事が期間内に竣功できない場合、免許は失効するということになります」との判断が示されています。

そこで今回の埋立工事の竣功期限は来年1月6日まで、明らかに免許は失効するとの考えが妥当ではないですか。監督しなければならない知事として判断しなければならないのではないでしょうか。お答えください。

さらに、議事録では、「(しかし、)事業者からの申請があり、正当な事由がある場合には、竣功期間延長を許可できるとされています。(中略)

 国土交通省は、埋立免許事務については、法令及び施行通達に基づき処理すべきである。竣功期間延長は、「申請があった時点において、埋立免許権者が、申請内容について正当な事由があるかどうかを審査し、許可の可否を判断するものである」との回答がありました。(中略)なお、上関原電計画については、平成十三年六月に国の原電開発基本計画へ組み入れられたこと等により、その土地利用計画が確定していたことから、平成二十年十月に埋立免許をしたものです。しかし福島第一原子力発電所での事故の発生に伴い、国においてエネルギー政策などの見直しが行われることとなりましたことから、この埋め立ての目的である原子力発電所の立地自体が不透明な状態になっております。このことによって、私は公有水面埋め立ての前提となる土地利用計画についても、実質的に不透明となっていると認識をしております。このような状況が続く限り、たとえ延長の許可申請があったとしても、それを認めることはできないと考えております。」と、答弁されています。

 問題としたいのは、二井元知事が、あえて23年6月議会で「平成十三年六月に国の原電開発基本計画へ組み入れられた」と言われている点です。

「重要電源開発地点の指定に関する規程」は平成17年2月18日に定められています。附則第2条の規定により、「現に電源開発基本計画に含まれている電源は、つまり上関原発などは、重要電源開発地点として指定することができる。」となっていることです。

 村岡知事による、13条の2による埋立延長の正当な理由は、「重要電源開発地点に指定された上関原発の位置づけが引き続き有効である」ですが、二井元知事は23年6月県議会時点で、あえて「原電開発基本計画」と言われ、フクシマ事故により「公有水面埋め立ての前提となる土地利用計画についても、実質的に不透明となっていると認識している。」と答弁されています。

 そこで、お尋ねです。最初に埋立許可をされた二井元知事が認められない。との認識を示されているにもかかわらず、延長許可されていること自体、おかしい、無理筋ではありませんか、お答えください。

土木建築部長答弁…上関原発についての2点の再質問にお答えいたします。

まず、免許の失効についてです。

公有水面埋立法の規定によれば、埋立工事が期間内に竣功できない場合、免許は失効するということになりますが、一方、埋立免許を受けた者が、必要な場合は、期間伸長の申請をすることができるとされています。

いずれにしましても、竣功期限に向けて、どのように対応するかは、事業者において判断されるべきものと考えています。

次に、二井元知事は延長は認められないとの認識を示しているにも関わらず、延長許可していること自体おかしいのではないかという御質問についてです。

お示しの二井元知事の答弁は、事業者である中国電力からの公有水面埋立免許の延長申請がなされる前の時点のもので、当時の状況を踏まえ示された認識です。

一方、これまでの延長申請については、上関原発の重要電源開発地点の指定が引き続き有効であることが、国から明確に示されたことから、土地需要があると判断し、延長を許可したものです。

商工労働部理事答弁…二井元知事の要請についてでございます。平成23年の要請ですが、事故を起こした福島第一原子力発電所と同じ型式の炉であり、安全基準やエネルギー政策の見直し等、国の対応を見極める必要があることから、当時、県として、中国電力に対し、埋立工事等の準備工事について慎重な対応を求めたものであります。

 この要請を踏まえまして、平成23年3月15日に中国電力自らが準備工事を一時中断されております。県としましては、こうしたことから、平成23年に要請を行った目的は達成されたものと整理をしております。

 次に、知事の真意についてでございます。令和元年の延長許可時点において、上関原発の原子炉設置許可申請に係る国の審査会合が開催されていない状況、及び中国電力の電力供給計画において上関原発の着工時期が未定とされている状況は現在も変わっておりません。

 このように、発電所本体の着工時期が見通せない状況にあることから、県はこのような中では、当面、埋立工事を再開すべきではないと考え、平成28年と同様、原発建設計画が存する県の知事の立場から、発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは埋立工事を施行しないことを要請したものでございます。