森林資源の循環活用について

2022.6.15一般質問

本県の林野面積は、438千haで、総土地面積611千haの72%を占め、林野率は全国平均を上回っており、森林資源の活用は重要な課題です。

また、地球温暖化対策の一つとして森林による炭素固定の取り組みを本県の「売り」にしてはどうかとも思って質問します。

先ず、脱炭素社会に資する木造住宅について質問します。

省エネ性能を有する木造住宅は確立した技術である。初期コストは高いが助成さえあればランニングコストは安くなるので普及は必然で、地域の建築業界の活性化につながるし、70年前後に一斉に植林され伐採期にある杉・ヒノキの活用で林業も活性化する。地球温暖化対策でもある。一石二鳥・三鳥にもなる。こうした脱炭素社会に資する木造住宅への誘導政策に取り組んでいく必要があると考えますが、知事の認識をお聞かせください。

森林による二酸化炭素の吸収量は、高齢な木は若い木に比べ減少します。つまり成長が盛んな若い木を増やしていくことが重要であり、そのためにも、適期に伐採し、使って、植えるという森林資源の循環利用を進めていくことが必要です。

森林資源の循環利用を進めるには、さらなる木材の利用促進を図ることが必要であり、そのためには多くの木材を使用する構造材への利用、欧米で普及し近年注目されているコンクリートより軽く断熱性が高い直交集成板(CLT)の活用が有効と言われています。

国では、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」が、昨年10月1日に施行され、法律の題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変わるとともに、法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大されました。また、農林水産省の特別の機関として木材利用促進本部が設置され、木材利用促進本部の下、政府一体となり、地方公共団体や関係団体等と連携し、建築物におけるさらなる木材利用の促進に取り組むとされています。

そこで、まずは計画的にCLTを活用した公共建築物を建築していくべきだと考えますが、知事のお考えをお示しください。その上で、民間においてもCLTを利用した建築物が広く普及されるよう、技術支援も含め取り組んでいく必要があると考えますが、知事の認識をお聞かせください。

関連して、少花粉杉への植え替え促進についてお聞きします。

国民の四割が罹患し、国民的な病となっている花粉症は、その主な原因が杉、ヒノキと言われています。国でも、花粉の少ない杉やヒノキの品種開発を進めており、2032年度までに杉苗木の年間生産量に占める花粉症対策に資する苗木のシェアを七割までに増加させることを目標としています。

花粉症で悩む県民にとっては、すぐにでも全ての苗木が少花粉杉、ヒノキになってほしいと願っているはずです。

そこで、本県では少花粉杉・ヒノキのそれぞれの植栽状況について、お聞きします。

さらに、伐採後に杉を植栽するに当たっては、今後全てを少花粉杉に更新していくべきです。その実現のためにも少花粉杉苗を多く生産する必要があると考えます。

県では、少花粉杉への植え替えについて、国と同様に目標を設定し、促進していくべきと考えますが、知事のお考えをお示しください。

最後に、やまぐち森林づくり県民税および森林環境譲与税によるそれぞれの事業概要と評価と課題について、お聞かせください。

土木建築部長答弁…脱炭素社会に資する木造住宅への誘導政策についてお答えします。

県では、県産木材を利用し、省エネ性能を有する木造住宅について建築主に対する助成を実施しています。

また、関係団体と連携し、高断熱・高気密な木造住宅の設計や施工に関する講習会を開催し、大工や工務店の技術者の育成にも取り組んでいるところです。

県としては、引き続き、脱炭素社会に資する木造住宅の普及に取り組んでまいります。

次に、直行集成板いわゆるCLTの活用についての2点のお尋ねにお答えします。

県では、国の法改正を受け、令和4年3月に「建築物等における木材の利用促進に関する基本方針」を策定し、公共・民間の区分や工法を問わず、県産木材を利用した、建築物の木造化を推進しているところです。

 まず、公共建築物の木造化については、コストや技術面で困難なものを除き、積極的に促進しています。

なお、お尋ねのCLTを活用した建築も、検討すべき工法の一つであるものの、その導入については、発注者が適性やコスト等の要素を検討して選択されるものと考えています。

次に、民間における建築物の木材利用の促進については、CLTをはじめとした最新の設計・施工技術を導入した事例をとりまとめ、建築主や県民等への情報提供に努めています。

特に、技術支援については、施工業者等を対象とした研修会や情報提供を通じ、先進技術の普及啓発に努めるとともに、こうした技術を活用できる人材の育成を図ることとしています。

農林水産部長答弁…少花粉スギへの植替え促進についての2点のお尋ねにお答えします。

まず、本県における植栽状況についてです。少花粉スギについては、平成23年度に初めて植栽が行われて以降、これまでの11年間で約11万本が植栽されています。

なお、令和3年度実績では、スギの植栽本数全体の2割に相当する約3万本が植栽されています。また、少花粉ヒノキについては、県内における植栽実績はありません。

次に、国と同様に、少花粉スギの植替え目標を設定し、促進すべきとのお尋ねです。

県では、国の方針に沿って、現在、県営林木育種園において、現存する種子採取用の母樹を、成長や形質に優れ、さらに花粉も少ない新しい品種への更新を図っているところであり、令和20年度を目途に、県内で植栽されるスギは、全て、花粉症対策苗木に替わる予定です。

次に、やまぐち森林づくり県民税および森林環境譲与税についてのお尋ねにお答えします。

 県では、森林づくり県民税を活用して、荒廃した森林を計画的に整備し、健全で豊かな森林づくりを推進しています。

 この結果、第3期対策の終期である令和元年度までに、荒廃森林については、6千5百ヘクタール、繁茂竹林については、1千4百ヘクタールを整備し、県下各地で荒廃した森林が再生し、機能回復が進んでいます。

 近年の豪雨災害の頻発などにより、森林の土砂災害防止機能等への期待が高まる中、今なお荒廃した森林が多く見受けられることから、引き続き、その整備等に取り組んでまいります。

また、森林環境譲与税については、森林経営管理法に基づき市町が行う、所有者自らが経営管理できない森林の集積やその整備に活用されており、現在、全ての市町が取組に着手し、所有者への意向調査を実施した市町の割合が全国平均を上回るなど順調に進んでいます。

 なお、県においても森林環境譲与税を活用し、森林総合情報システムの機能強化や研修会の開催など、市町の取組を支援しています。

一方で、多くの市町で林業の専門職員が不在であり、取組を円滑に進めるためには、技術的な支援など多面にわたるサポートが必要です。

 このため、県では、「やまぐち森林経営管理サポートセンター」を核とし、引き続き、市町への指導・助言など、総合的な支援を行ってまいります。

 県としては、森林づくり県民税や森林環境譲与税を活用し、森林資源の適切な管理と林業の成長産業化を推進してまいります。