2025年9月県議会
(1)中間貯蔵施設と地域振興
中間貯蔵施設について上関町議会が5年前から非公開で重ねていた秘密協議会の内容を、中国新聞が情報開示請求で判明したものを報道し、そして、中国電力が、「上関原子力発電所の建設に時間を要するなか、2023年2月、上関町長から、まちづくりのための財源確保につながる新たな地域振興策を喫緊の課題として検討するようご要請をいただきました」と検討に至った経緯などを説明したことから、この問題が一気に表面化した。
2024年2月定例会で、私は、「原発交付金で上関町の振興が図れるのか?」と、阿武町と高知県東洋町との財政状況と人口減少率の比較表を示し見解を尋ねましたが、答弁は、「市町におけるまちづくりについては、地域の実情や住民のニーズ等を踏まえながら、その財源も含め、各市町において主体的に判断し、実施されるべきものです。」とそっけないものでした。
原発は立地地域を豊かにする。経済活動上の利益が得られるとの主張がある。
しかし、新潟県・柏崎刈羽原発の柏崎市の産業への影響という点で検証した、2015年~2016年の新潟日報の報道及び新潟大学経済科学部の藤堂史明教授の考察によると、1970年代から追跡した事実で、「建設業のみ顕著な生産増で、卸売・小売業やサービス業(電力除外)など他産業への波及なしです。さらに、2024年2月7日の新潟日報は、利益が得られるという主張と矛盾するのが、建設業以外の不振~個人所得は他市と差はわずかとの検証結果を報道している。
その上、40年以上、原発を立地させてきた結果、新潟県の財政は、令和5年度の実質公債費比率が18.4%で、都道府県の財政ワースト2に悪化している。
従って、2023年11月定例会、2024年2月定例会でも尋ねたが、関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地探しで、これまで管内の210自治体に理解活動を続けてきたが、名乗りを挙げる自治体はなく、それどころか京都府宮津市は「ふるさと宮津を守り育てる条例」を施行し、地域の自然や生活環境の保護をうたう条例の理念にそぐわぬものとして「原子力関連施設」を明記。その宮津市は、 2019年度の<将来負担比率>は243.0となり、 夕張市に次ぐ全国ワースト2位にランクされていた。2021年度には財政再建団体に指定される可能性もあったが、この深刻な財政危機の中でも、電源三法交付金の誘惑などには惑わされず、中間貯蔵を頑として拒んでいるのです。
そこで、一時の金に目がくらみ、未来の子孫たちへの迷惑を省みない政治とは決別するためにも、中間貯蔵施設建設拒否の表明をすべきです。県知事にお尋ねします。
参考資料
2024年2月7日 新潟日報
【誰のための原発か】地域経済編―個人所得〈下〉他市と差はわずか、完成後は検査で流入するが・・・「稼げる部分は売り尽くした」
(2)核燃料サイクル破綻の矛盾の押し付け
中国電力が上関町や県に中間貯蔵施設建設は可能だとする調査結果を伝えたことについて、さっそく、島根原発が立地する松江市の市長は2日の定例の会見で国が責任を持って核燃料サイクルを確立して行く必要があると述べました。その上で、島根原発に核廃棄物が留め置かれることがないよう国に要望を続けると述べ上関町の状況を注視する考えを示しています。
つまり、原発を受け入れている地元市長として、国・事業者が責任をもって、使用済み核燃料は必ず県外に搬出して欲しい。との手前勝手な表明です。
国に要望を続けると言うが、そもそも核燃料サイクルが破綻しているからこそ、原発再稼働を進めるために出てきたのが中間貯蔵施設です。
しかし、世界では使用済み核燃料再処理から撤退する動きになっている。フィンランドだけでなくスウェーデンも処分地を決めて安全審査中、そして、イギリス政府も再処理するなどして保有する100トン超の民生用プルトニウムについて、地層処分を前提に「固定化」を進めると発表。プルトニウムが核兵器に転用されないようセラミックにして閉じ込める方法などが検討されている。イギリス原子力廃止措置機関が固定化の研究開発を続け、10年内に、核物質の処理などに向けた新たな施設を建設する方針だという。さらに、フランスも精密調査をスタートしており、海外の場合は、核燃料サイクルではなくて直接処分に向かっている。
つまり、世界ではプルトニウムを分離することによって核兵器に転用されるという危険性について気づいて、アメリカを中心に再処理の計画は中断しています。
そして、またMOX燃料の経済性の無さにも気づいています。
直接処分、最終処分は、地下深く閉じ込めるということですが再処理をしたとしても危険な高レベル放射性廃液が出ますので、結局、同じような処分をしなきゃいけない訳です。そういう意味では長期的に管理することを考えると再処理などのような余計なことをせずに、そのまま静かに直接処分したほうがいいだろうという考え方になっている。
従って、まずは政府が、これまでの核燃料サイクル計画、その過ちをちゃんとまず正直に認めて謝罪することだと思います。そうすれば、おそらく国民は安心してそしてまた信頼性も上がると思います。
その上で、現実的にあった計画を再構築すれば、賛成とか反対といった二項対立ではなく冷静な議論が可能になるのかと思います。
そこで、再処理や高速増殖炉の未来が見えないのに、原発再稼働だけ進めて、日々、新たに使用済み核燃料を作り続ける矛盾に対する県の認識をお聞かせください。
その上で、原子炉等規制法には、中間貯蔵施設の建設に町や県の同意を必要とする規定はないが、実際には同意なく建設するのはむつ市の例からして、できる筈がない。そこで、具体的に究極の迷惑施設を山口県に押し付けようとする上関中間貯蔵施設計画に、山口県知事としてきっぱりと反対表明すべきだが、お尋ねです。
(3)瀬戸内海国立公園の「普通地域」を核のゴミ捨て場に?
今回の報告は立地可能性調査に関するもので、施設の事業計画が示されていません。貯蔵計画量を含む事業計画を示すと、施設が主として関西電力のためであることが浮き彫りになるのを避けたいためでしょうが、県の認識を尋ねます。
また、重点調査項目である地盤においては、ボーリング調査とともに文献調査も行われています。しかし、9月14日に、「地震被害想定見直し、山口県が新たに活断層6本を調査対象に・・・国東半島沖から周防大島町付近の活断層など」と読売新聞が報じています。この国立研究開発法人産業技術総合研究所が昨年度実施した最新の海底活断層調査結果が反映されていません。この調査によれば、国東半島沖から周防大島に連続的に伸びる活断層があり、その長さは少なくとも60㎞、延長部まで含めると70~75㎞とされ、最大でマグニチュード7.8~7.9の規模の地震が起きる可能性があると言う。この点が含まれていない報告書は、調査が不十分であることを示すものでは、お尋ねします。
さらに、施設に必要な港湾の計画地域に該当する海岸や海域の調査は行われていません。中国電力は上関原発の環境影響評価で海岸部の生物調査の見落としを指摘され追加調査を余儀なくされた教訓を忘れたのでしょうか。温暖化が進行するなど環境の変化がある中で当時の調査結果をそのまま採用することはできません。港湾を含む事業計画を明らかにし、その施設配置計画に必要な調査も行わずに、「立地の支障となる技術的に対応できない問題はないものと評価し、立地は可能である」と結論付けています。
くわえて、計画地周辺の海域が、生物多様性条約に基づき政府が生物多様性の保全を目的として国連に登録した海洋保護区であるとの環瀬戸内海会議の指摘をも全く無視しています。海洋保護区での埋め立てや港湾建設は生物多様性の低下をもたらす可能性があり、そのことに言及がない報告書は立地可能性の検証として全く不十分です。
しかしながら、非公開の上関町議会・全員協議会で中電からの中間貯蔵「適地判断」説明を受けた、施設建設に肯定的な町議は「中電の安全性の調査は信じられる」との発言報道や、18日のNHKの「上関町長 中間貯蔵施設“国・事業者・町が分担し町民に説明”」、その上で、「最終的な判断は議会を尊重し、町長が判断すべきだ」と述べた。との報道には、驚きを禁じえません。「上関町は議会と町長で判断する」とする傲慢を許してはなりません。
そこで、環瀬戸内海会議の指摘に真摯に向き合うこと、そして、いたずらに判断を先送りしないことこそ肝要だが、知事のご所見をお聞かせください。
産業労働部理事答弁・・・原発関連の御質問のうち、まず、中間貯蔵施設と地域振興、施設計画への意思表明、環瀬戸内海会議の指摘に関する認識、についての3点のお尋ねにまとめてお答えします。
使用済燃料中間貯蔵施設については、中国電力が、上関町から新たな地域振興策の検討要請を受けて提案し、町がその調査検討について了承し、調査が実施され、今般、立地可能性調査の結果が報告されたものです。
上関町は、施設設置については、事業者から具体的な計画が提示された後に判断することとしており、現時点、その是非を判断しているものではありません。
このたび、上関町に対し、立地可能性調査報告書が提出され、今後、町において調査結果の確認等の取組が行われていくものと認識しており、県としての見解や対応を申し上げる状況にはないと考えています。
次に、核燃料サイクルに関する認識についてです。
エネルギー政策は国家運営の基本であることから、核燃料サイクルをどうするかについては、国の責任において判断されるべきものであり、県として独自に見解を述べることは考えていません。
次に事業計画についてです。
事業計画は事業者である中国電力が作成するものであり、県として見解を述べる立場にはないと考えています。
次に、産業技術総合研究所の活断層調査結果の反映についてです。
中国電力は、上関原子力発電所原子炉設置許可申請書において、お示しの活断層をF-3断層群、F-4断層群として評価しており、今回の調査結果に反映している、としています。
| 再質問・・・知事は原発、中間貯蔵施設の二つの計画が同じ地区にあるのは全国どこにもない、過大な負担だと言われながら、判断を先送りされ続けています。
そして、上関周辺自治体での中間貯蔵施設反対の住民の声は日増しに高まっていることから、田布施町議会で田布施町長は、建設に対する賛成、反対の専門家を招いてシンポジウムを開催したい意向を表明され、シンポジウムや住民アンケート調査しての、対応の参考にする考えを示されています。 そこで伺います。まず、国は電源立地等初期対策交付金相当分として、1.4億円を立地可能性調査の開始年度から県知事の同意年度まで、立地県または市町村に交付するとなっています。このことで間違いないか、お尋ねです。 そのうえで、上関町だけの判断にこの問題を委ねるのではなく、知事の再三の表明及び上関周辺市議会での首長発言を踏まえれば、県がこの交付金を申請し、県内各地での、賛成、反対の専門家による公開シンポジウムの開催経費に活用すべきではないかお尋ねをして、再質問といたします。 |
中嶋県議の再質問にお答えします。
まず、電源立地等交付金制度についてですが、初期対策として、対象電源が設置される地点をその区域に含む県又は市町村に対し、立地可能性調査の開始年度から知事の同意年度まで1.4億円が上限として交付されます。
次に国交付金を活用した県のシンポジウム開催についてです。
このたび、上関町に対し、立地可能性調査報告書が提出され、今後、町において調査結果の確認等の取組が行われていくものと認識しており、県としての対応を申し上げる状況になく、現時点、県として交付金を活用して事業を行うことは考えていません。
| 再々質問します。上関町長は、立地可能報告書を第三者を入れた精査を町が大きな金や時間をかけて行うことは困難と議会答弁されています。上関町は多額の広報・調査等交付金をもらい続けておられるにもかかわらずこの体たらく。だったら、先ほどの交付金を活用して県がやるべきではありませんか。 |
上関町の広報・調査等交付金に係るご質問でございましたが、町における調査報告書の確認等の取組については、町において判断されるものであり、県として見解を述べる立場にはないと考えています。
