2024年6月県議会
1、国の指示権拡大について
非常時に自治体への国の指示権を拡大する「地方自治法の改正」ついては、日本弁護士連合会をはじめ多くの団体・個人からの反対・危惧・慎重審議を求める声が上がっています。
2000年施行の地方分権一括法で国と自治体の関係は「対等協力」ともなっています。それを「主従関係」「下部機関」のように変質させてしまっています。
指示権の要件も曖昧で、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生」した場合や、さらに「発生するおそれがある」場合にまで広げられ、実質的に過剰な裁量・恣意を国に認めさせることになってしまいます。
さらには、この間の大規模災害や感染症への地域状況の総括もなく、「国民の生命等の保護のために」と「非常事態」の法的拘束力を国が持ち、しかも国会への事前承認は「緊急性に支障がある」として拒否されてもいます。
東京都世田谷区の保坂展人区長は、コロナの流行初期、国がPCR検査の拡充に消極的だったため、区が積極的に検査した事例を紹介し、自治体の判断を飛び越えて国に強い権限を持たせる危険性を指摘。「国がいつも正しいわけではない」と。また、住民に最も近い市区町村を飛び越える形で、緊急時にそれぞれの地域の住民の命や暮らしを守る最善の指示を国が出せるのかを疑問視する首長の発言が相次いでいます。
そこで、この国の指示権拡大に関する県の所見をお尋ねします。
このままでは、国は大規模災害や感染症を口実にしているものの、その「非常事態」は「戦争事態」の口実になりかねません。
事実、今月初旬に自宅で食事をしながらTVを見ていると、耳に飛び込んできたのは、“九州地方知事会で、内閣官房が「外国からの武力攻撃・避難計画策定を要請」″でした。・・・慌ててスマホで画面を撮影。
内閣官房から、外国からの武力攻撃に備え、「沖縄県からの避難を受け入れる体制をつくるよう九州各県と山口県に要請」「避難当初の約1か月で必要・・・輸送手段の確保、収容施設の提供、食品の調達など」「自治体と事業者の役割分担も含めて整理するよう求める」「訓練の1つの想定として、沖縄県の市町村と受け入れ先となる県の組み合わせを始めて提示」「石垣市、福岡空港を経由して、福岡県・大分県・山口県に避難」「各県、来年2月ごろまでに初期的な計画づくり進め3年間かけて“受け入れ基本要領”の作成を目指す」でした。
台湾有事・中国の脅威をことさらに煽って、石垣島・南西諸島に、陸上自衛隊で一番新しい駐屯地を造り、ミサイル部隊を配備するから、こうした対応を迫られるのであって、まさに、国の指示権拡大の先取り。押し付けではないか。この件に関する県知事の所見及び対応を尋ねます。
村岡知事答弁・・・中嶋議員の御質問のうち、私からは、国の指示権拡大に関する所見について、お答えします。
先般の新型コロナウイルス感染症への対応では、個別法で想定されていなかった事態が生じ、それに対処する中、国と地方の役割分担について課題が残されました。
この度の地方自治法の改正は、そうした課題を踏まえ、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合における、国と地方の関係の特例として、国の補充的な指示の規定が盛り込まれたものです。
この指示は、個別法で指示ができず、国民の生命等の保護のために特に必要な場合に限定的に行われる、どこまでも補充的なもので、また、あらかじめ地方自治体に意見等を求めるとされていることから、国と地方を対等とする地方分権の基本原則から外れるものではないと考えています。
さらに、全国知事会からの要請も踏まえ、指示を必要最小限のものとすることや、事前に関係自治体と十分に必要な調整を行うことなど、地方自治の本旨や地方との対等な関係を損なうことのないよう、附帯決議も行われているところです。
こうしたことから、この改正法については、今後、地方公共団体の自主性・自立性に十分配慮しながら、適切に運用が行われるものと考えています。
総務部長答弁・・・国の指示権拡大についてのお尋ねのうち、国からの避難計画の作成要請についてお答えします。
この度の要請は、国民保護法において、都道府県が主体的な役割を担うとされている避難住民の救援に係るものであることから、国の指示権拡大の先取り、押し付けとのご指摘は当たらないと考えています。