使用済み核燃料「中間貯蔵施設」(9月山口県議会質疑④)

議会名 所属会派 質問者 質問日 区分 答弁
R6.9定例 社民党・市民連合 中嶋 光雄 9/26(木) 一般 商工労働部理事

4 使用済み核燃料「中間貯蔵施設」について

 関西電力は福井県に、「使用済み核燃料の県外搬出」を再三再四約束、そのたびに反故。そして、今年9月までに完成の予定であった六ヶ所村再処理工場の完成時期が27回目の延期で二年半先延ばしされたため、関西電力が昨年10月に福井県に示していた「2026年度に使用済み核燃料を再処理工場へ搬出する」 ことを前提とするロードマップも瓦解(参考資料②参照)。今回はさすがに杉本福井県知事も、今年度末までにロードマップの見直しをするという関西電力に対し、「実効性のあるロードマップが示されない場合は、原発内に一時保管する乾式貯蔵を認めない」(朝日9月6日)と強い口調で迫っています。

9月9日から開催の福井県県議会でも、与党自民党をはじめ全県議からも、怒りの声がわき上がっています。福井テレビは、その様子を次のように伝えています。

【県議会の代表質問で、主な会派から「関電が約束を守らない以上、原発を即停止するべき」との意見が相次ぎました。12日に行われた県議会の代表質問で、最大会派・自民党の議員は、再処理施設の完成の遅れから関西電力の使用済み核燃料の県外搬出計画にも遅れが出ることについて「美浜3号、高浜1、2号機の運転を実施しないという発言をしているが、ロードマップを見直さなければならないこの状況では、当時の発言まで立ち戻って議論する必要がある」と述べました。県議会は、これまで県の原子力政策に関し、全面的に知事に一任してきましたが、国や関電だけでなく杉本知事にも厳しい判断を迫った形となりました。】と。

「搬出予定が二年半先に延びた」ということは、単に福井県内の問題にとどまらず、当然ながら上関町の中間貯蔵計画にも大きな影響を及ぼすことになります。  

もし再処理工場が計画通り操業できていれば、使用済み核燃料は原発サイトおよび中間貯蔵施設から順次、六ケ所へ搬出される、と言うのが、そもそもまやかしです。

杉本福井県知事は9月6日、「(新たなロードマップが)必要な搬出容量を継続的に確保していける内容かどうかだ」とも述べています。

しかし、福井県知事のいうところの「実効性のあるロードマップ」など期待する方が、しょせん無理なのではないでしょうか。なぜなら、再処理工場が順調に操業できたとしても、使い道のない余剰プルトニウムと行き先のないガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)が大量に生まれ続けるだけです。

青森県は29年前に、英仏から返還されたガラス固化体2,140本を30~50年の暫定保管で受け入れました。国は「青森県内を最終処分地にしない」と約束しましたが、約束の30年を控えた今も行先は決まっていません。北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村は、地層処分の概要調査を受け入れていますが、北海道には「核のゴミを持ち込ませぬ道条例」があり、道知事は概要調査にも反対しています。また昨年は、長崎県対馬市で、地層処分の概要調査を拒否する自民党現職の市長が再選されました。

英仏から返還されたガラス固化体2,140本の行先も見えない中で、仮に再処理工場が本格稼働(年間800tUの使用済み核燃料を再処理)すれば、新たにガラス固化体が年間約1,000本も発生(フル操業時)してしまうのです。このような馬鹿げたことが始まれば、青森県民だけでなく、わが国の国民は黙ってみているでしょうか。国を揺るがす大きな社会問題となることは必定です。

再処理工場をフル操業すれば、ガラス固化体とは別に、年に6.6㌧ものプルトニウムが生まれてしまいます。わが国の原子力委員会は「余剰プルトニウムを持たない」という国際公約を実現するため、「六ヶ所再処理工場、MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」(我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方, 2018.7.31)という方針をとっていることを念頭に置く必要があります。

プルサーマルは、2016年に高浜3・4号機で再開されたものの、認可されている本数を下回るMOX燃料を、ほとんど申し訳程度に装荷しているにすぎません。

電力会社の本音は、燃料加工費が10倍も高くつくプルサーマルには消極的なのです。

佐賀の玄海3号機と愛媛の伊方3号機はフランスに保管されているわが国のプルトニウムを使い果たし、現在、プルサーマルを中断しています。

沸騰水型原発ではプルサーマルを始める見通しさえたっていません。 これまでのプルサーマルによるプルトニウム消費実績は、長期停止期間を除き、13ヶ月運転・3ヶ月定検を仮定して計算しても年平均0.69t にとどまっています。つまり、六ヶ所再処理工場での操業率10%程度分しか、プルサーマルでプルトニウムを燃やすことができていないのです。

再処理工場10%程度の操業では、40年間を費やしても3,200tUしか再処理できません。これは、これまでに六ヶ所再処理工場へ送られて工場内のプールで貯蔵されている2,968tU(2023年3月末)を250tU上回る程度です。なお、再処理工場の寿命は40 年です。つまり、2024年3月末現在の全国の原発サイト内の使用済燃料16,720tUの大半は、40年後も再処理工場へ搬出できないまま「核のゴミ」になる運命を背負わされることになるのです。「将来の搬出」先はどこにもありません。

2000年に、更(ふけ)田(た)(前)原子力規制委員長が、むつ市の中間貯蔵施設について「使用済み核燃料を運び出す先がない状態で、容器の耐用年数に近づく事態を恐れる」と貯蔵の長期化を懸念していたのは、たとえ再処理工場が操業できたとしても、工場の稼働が制限されることを氏はしっかり認識していたからなのです。

上関町が「中間貯蔵」という名目で、いったん使用済み核燃料を受け入れれば、上関町での永久保管となることは必至です。

福井県知事が、「今年度末までに、実効性のあるロードマップが示されない場合は、使用済み核燃料を原発内に一時保管する『乾式貯蔵』を認めない考え」と表明しているこの機会にこそ、山口県としても、真に未来を見据えて、県内に核のゴミを受け入れないとの表明を内外に発信する好機ではないでしょうか。

今後、国策の名の下に、中間貯蔵を国も強力に推し進め、迫ってくる可能性があります。その前に一刻も早く知事が決断されることを期待いたします。知事の見解を伺います。

 使用済み核燃料中間貯蔵施設についてのお尋ねにお答えします。

 上関町における使用済燃料中間貯蔵施設については、現在はあくまでも、施設が立地可能なのかどうか、その調査が実施されているところであり、県としての対応を申し上げる状況にはないものと考えています。

4 使用済み核燃料「中間貯蔵施設」について(再質問)

再質問・・・1990年代以降、関西電力は福井県に、「使用済み核燃料の県外搬出地」を再三約束し、その度に反故。そして「2023年末を最終期限として確定する。決められない場合は3原発を停止する」と約束、切羽詰まっての上関だが、時間がかかる。

その延長上での、今回の再処理工場の二年半延期で、関電が福井県に示していた「ロードマップ」の瓦解です。

9月13日の福井県議会・全員協議会の場でも、釈明に来た関西電力本部長と資源エネ庁担当者に対する厳しい発言が伝わっています。

『本当に大丈夫なのかというロードマップを我々は認めた。それがここにきて、ロードマップは白紙になった。

なんとかなるだろうという甘い認識が我々にもあったかもしれないが大きな間違いだ。指導指導って国は言ってるが、言い訳にしかなってない。こんな会議なら開く必要ない。』とまで、元県議会議長の自民党県議は、激しい口調で資源エネ庁と関電に迫っています。

使用済み核燃料をめぐる、福井県でのこれまでの議論を他山の石とすべきです。見解を伺います。

現在、わが国が保有するプルトニウムは45㌧もあり、余剰プルトニウムを持たないとする国際公約がある。原子力委員会は「プルトニウム量を減らせなければ再処理工場の稼働を制限」する方針です。特に、アメリカからの核拡散の懸念を無視してまで、再処理工場をフル稼働する度胸が政府にある訳がない。

また、本質問で指摘した、再処理工場は10%操業に留まらざるを得ないとの問題点を直視したとき、いったん上関町に中間貯蔵施設を受け入れれば、永久貯蔵は必然です。

 原発サイト外の使用済燃料乾式貯蔵対策・初期対策交付金相当部分は、1.4億円が県知事同意の年度まで交付、県知事同意により9.8億円が2年間交付される等となっており、県知事同意が決定的意味を持っています。

 そこで、知事の良識あるご決断を重ねて求めます。お尋ねします。

使用済み核燃料「中間貯蔵施設」に関する再質問にお答えします。

まず、福井県での議論を他山の石とすべきとのお尋ねについてです。

福井県において関西電力の示したロードマップ等に関し、 現在、福井県の議会等で様々な議論が行われていること等については、報道により承知していますが、そうした他県の議会等での議論について、県として見解を述べる立場にはなく、お答えできるものはありません。

次に、再処理施設のフル稼働はできず、中間貯蔵は永久貯蔵になる、決断を求めるとのお尋ねについてです。

  エネルギー政策は国家運営の基本であることから、再処 理施設の稼働など核燃料サイクルをどうするかについても、 国の責任において判断されるべきものと考えています。

 いずれにしても、上関町における使用済燃料中間貯蔵施 設については、現在はあくまでも、施設が立地可能なのか どうか、その調査が実施されているところであり、県としての対応を申し上げる状況にはないものと考えています。

4 使用済み核燃料「中間貯蔵施設」について(再々質問)

再々質問・・・上関町長が、9月町議会で、「施設は使用済み燃料を再処理工場に搬出するまでの間、一時的に管理するもので、必ず搬出されることが想定されている」「最終処分場になることは無い」との答弁は、「あとは野となれ山となれ」、「40~50年先の将来はあずかり知らぬ」、なんでしょう。

詰まるところ、原発には未来がないのであり、原発政策とは未来に核のゴミを押しつける、世代間差別政策に他ならないのではと、お尋ねし、質問を終わります。

使用済み核燃料「中間貯蔵施設」についての再々質問にお答えいたします。

原発政策とは、世代間差別政策に他ならないのではないか、とのお尋ねについてです。

  エネルギー政策は国家運営の基本であり、原発をどうするかについては、安全性、信頼性の確保を大前提に、国の責任において判断されるべきものです。

したがいまして、県として、お尋ねのような事柄について、見解を述べることは考えていません。