議会名 | 所属会派 | 質問者 | 質問日 | 区分 | 答弁 |
R6.9定例 | 社民党・市民連合 | 中嶋 光雄 | 9/26(木) | 一般 | 環境生活部長 |
3 「奇跡の海」の保全について
(1)国策の優先順位について
上関町長島周辺の海は多くの希少生物が生息することなどから、海外も含めて多くの研究者が訪れ、「失われたと思っていた瀬戸内海の自然が唯一残っている場所」と指摘されたことから、「奇跡の海」と呼ばれています。
この海に関し、県内の5団体が8月に県知事に「上関町での『使用済み核燃料中間貯蔵施設』及び原発計画に関する生物多様性の観点からの要請書」を提出、意見交換を行いました。 この「奇跡の海」を保全すべく、6月定例会での私への答弁を含め、質問します。 ①(上関町長島をぐるり取り巻く)海域は、現在、共同漁業権が免許されている。②海洋保護区は、該当する法律等により、既に生物多様性を保全するための規制が講じられている。➡意見交換の中で、「共同漁業権区域も海洋保護区の中の一つであると県も認識している。③公有水面埋立法に基づき、法令に従い、厳正に対処した。埋立免許を取り消すことは考えていない。…との答弁・回答でした。 ①~③からは、所管外の事には答えようがない。との各部の逃げの姿勢が明らかになっただけです。 そこで、所管の壁を超え総合的な判断をされる副知事あるいは知事に伺います。 先ず、2022年の昆明・モントリオール生物多様性枠組みという国際合意や、それに対応した2023年3月に閣議決定された第6次生物多様性国家戦略も国策。国のエネルギー政策も国策。これらの国策に対し、優先順位をつけておられるのか、お聞かせください。 |
「奇跡の海」の保全についての御質問のうち、国策の優先順位についてのお尋ねにお答えします。
生物多様性国家戦略は、生物多様性条約と生物多様性基本法に基づく基本的な計画であり、人間の安全保障の根幹である生物多様性、自然資本を守り活用するための戦略です。
また、エネルギーは、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持発展に欠くことのできないものであり、エネルギー政策は国家運営の基本です。
これらの政策は、国において責任を持って進められるべきものであって相互間に優劣はなく、県として優先順位はつけていません。
3 「奇跡の海」の保全について
(1)国策の優先順位について (再質問)
再質問・・・先ず、知事は、「上関町の中電所有地が面する海は、すべて生物多様性を保持することをめざした海洋保護区である」と、報告を受けられ、そのように認識していますか?お聞かせください。
その上で、海洋保護区である田ノ浦地先の海域の埋め立ては、生物多様性国家戦略たる国策を阻害することになると言わざるを得ませんが、見解を伺います |
「奇跡の海」の保全についてのうち、生物多様性に関連した2点の再質問にお答えします。
上関町の中電所有地が面する海についての認識についてです。
上関町における中国電力所有地が面している海は、自然公園法に基づく瀬戸内海国立公園であるため、海洋保護区に該当すると認識しています。
次に田ノ浦地先の海域の埋立は、生物多様性国家戦略からなる国策を阻害するのではないかについてです。
生物多様性国家戦略は、個別の開発行為を規制するものではないことから、田ノ浦地先の埋立が、生物多様性国家戦略を阻害するものではないと考えています。
議会名 | 所属会派 | 質問者 | 質問日 | 区分 | 答弁 |
R6.9定例 | 社民党・市民連合 | 中嶋 光雄 | 9/26(木) | 一般 | 土木建築部長 |
3 「奇跡の海」の保全について
(2)埋立免許の伸長許可について
6月県議会での漁業権放棄についての答弁、「漁業補償契約については、当事者間の契約に関わることであるため、県として、見解を述べる立場にありません。」に関連して質問します。
公有水面埋立法に基づき県知事免許を受けたものは、埋立てを行う権利を付与された(以下、埋立権という)ことになる。ところが、この埋立権なるものに関して、公有水面埋立法のどこにも「物権である」とか「物権とみなす」とかの規定は無いため、埋立免許取得者(中国電力)は、他の自由使用(祝島漁民の自由漁業等)を排除できません。中電が祝島漁民に「おまえ達じゃまだからどけ」と言って排除できないのです。ましてや中電は旧四代漁協に共同漁業権を放棄させているのですから、祝島漁民に「妨害しないでください。」とお願いする他なかったのです。 にもかかわらず、2022年の「公有水面埋立に係る工事の竣功期間伸長の許可」の審査にあたり、「埋立工事に先立って実施する必要がある海上ボーリング調査について、調査地点付近で複数の船舶を停泊させるなどの行為が継続してあったことなどにより、当該調査を終了できず、埋立工事を期限内に竣功できなかったこと、また、これについては訴訟により解決を図ることが説明されており、合理的な理由が認められる。」として、訴訟期間11月を含めて伸長許可している。 そこで、中電と祝島漁民等の間の問題だが、当事者間に関わることには県は関与しないとする一方で、中電の言い分は取り上げる。不公平だが何故か。お尋ねです。 さらに、中電大株主たる本県が、中電に便宜を図るかのような行為は、利益相反行為になるのではないか。お尋ねです。 |
「奇跡の海」の保全についてのお尋ねのうち、埋立免許の伸長許可についてお答えします。
お尋ねの2022年の竣功期間伸長の申請については、埋立工事に先立って実施する必要がある海上ボーリング調査において、調査地点付近で複数の船舶を停泊させる行為が継続してあったことなど、調査の実施に支障となる事実があったことを確認し、工事を期間内に竣功できなかった合理的な理由があると認められたことなどから、伸長許可したものです。
県としては、埋立免許権者として、公有水面埋立法に基づき、適正に対処したところであり、中国電力の言い分だけを取り上げる不公平な扱いではなく、また、中国電力に便宜を図るような行為との御指摘は当たりません。
3 「奇跡の海」の保全について
(2)埋立免許の伸長許可について(再質問)
再質問・・中電が約束の期間内に埋立工事を竣功できなかった最大の要因は、国策に最早新規原発がないことであり、故に知事自身が埋立てしないように要請しているからですが、中電の埋立免許伸長許可申請書は、この事には全く触れておらず、また審査においても全く触れていません。明らかに恣意的な不作為と言わざるを得ませんが、審査対象としなかった理由をご説明下さい。
先ほどの部長答弁の中でありましたけれども、ボーリングに、いや、埋立てに先立ってというお話がありましたけれども、私たちは国の資源エネルギー庁に聞きましたけれども、国として中電さんにそんな指示を出した覚えもないし、中電さんが勝手にやられてることですと、こういうふうに言われました。このことについてどう思われますか。 |
「奇跡の海」の保全についてのお尋ねのうち、埋立免許の伸長許可についての再質問にお答えいたします。
埋立免許の伸長許可にあたって、知事の要請書を審査対象としなかった理由についてです。
公有水面埋立法において、許認可を行う場合、提出された申請書に基づき判断することとされており、埋立免許権者としては、申請内容の的確な把握に努め、法に基づき、適正に審査を行うこととなります。
令和4年の期間伸長申請において、指定期間内に埋立工事を竣功できなかった理由については、知事の要請への対応が理由であるとの説明はなされていないことから、要請については審査していません。
また、ボーリングの埋立てに先立って指示等はしてないか。勝手にやったことと思うがどうかというようなご質問であったかと思います。
埋立工事により地層が乱される可能性があることから、実質データの確実な取得のためには、埋立工事に先立って海上ボーリング調査を実施しなければならないということが主張されており、県としては、埋立ての意思を持って申請がなされ、申請の内容が合理的と認められたことから、正当な事由があると判断し、延長許可したものであります。
〇一般質問の答弁から等の質問(2024.10.2 土木建築委員会)
1.「公有水面埋立法において、許認可を行う場合、提出された申請書に基づき判断することとされており」とは、どの条文のことを言っているのでしょうか?
<櫻井港湾課長>・公有水面埋立法に条文があるということではなく、公有水面埋立法における許認可を行う場合には、提出された申請書に基づき判断するということを答弁したもの。・なお、公有水面埋立法の解説書のうち第13条の2第1項の出願事項の変更の手続のところに、「埋立権者の申請に基づき、正当な理由があるときは、免許権者は出願事項の変更の許可を行うことができる」とされているところである。
2.「令和4年の期間伸長申請において、指定期間内に埋立工事を竣功できなかった理由については、知事の要請への対応が理由であるとの説明はなされていないことから、要請については審査していません。」
つまり、知事は、申請書の必要事項の記載の有無については審査していないと言うことですが、こうした杜撰な審査でよいという根拠はどこにあるのでしょうか。
<櫻井港湾課長> ・令和4年の期間伸長申請において、指定期間内に埋立工事を竣功できなかった理由については、知事の要請への対応が理由であるとの説明はなされていないことから、要請については審査していない。・許認可を行う場合は、提出された申請書に基づき判断することとされており、埋立免許権者としては、申請内容の的確な把握に努め、法に基づき、適正に審査を行ったもの。
●埋立てをしないようにという要請が反故にされているにもかかわらず、期間内に竣功できなかった理由が中国電力の申請書にも全く触れられていない。こういう不合理な審査があり得るのか。
<櫻井港湾課長>・どのように進めるかは県で関知することではなく、事業者の方で対応されるべきものと考えている。・伸長許可の決裁については、公有水面埋立法に基づく期間伸長の決裁であり、今までも答弁しているが、要請については別の立場の知事が示しているものであり、伸長許可については、あくまでも申請書の内容に基づいて、土地需要などを確認したため許可したもの。
●工事の進捗を監督するのは埋立免許権者である都道府県知事がするものであり、年に1回は進捗状況報告をするようになっており、来年の4月には提出されると思うが、知事の要請に何の言及もないのはおかしいと思うべきだ。少なくとも世間一般の感覚として知事が要請していることについてはどうなのか。改めて、尋ねる。
<櫻井港湾課長>・毎年年度末の状況について翌年の4月まで報告を求めるということについては、国の通達に基づいて行っているもの。あくまでも、報告については、埋立免許権者として求めているものであり、監督云々ということで求めているものではない。これからも、例年と同様、年度末の状況について求めていきたい。
●知事が埋立てをしないように求めているというのは何の意味もないということか。事業者は知事の意見を無視しているということで、県の担当課長として怒るべきと思うが、どうか。
<櫻井港湾課長>・あくまで、埋立免許権者としての立場に従って手続を行っているということに尽きる。
●国が原子炉設置許可を出す段階になれば改めて出してくれとすれば済む話を引き延ばす意図は何かあるのか。
<櫻井港湾課長>・意図は特にない。繰り返しになるが、伸長許可については中国電力の方で適切に対応されるべきと考えている。・今までの伸長許可は、申請書の内容を確認したところ認められたため、埋立免許権者としては許可したものである。
●埋立免許に基づく埋立権について、埋立法のどこにも「物権」「物権とみなす」と規定はない。この点だけからも、埋立免許取得者が他の自由使用を排除できないことは明らかだ。
できもしないものを許可せず、それこそ厳正に対処するということができないのかという点についてはどうか。
<櫻井港湾課長>・公有水面埋立法では、漁業権者等の水面権利者に関しては同意及び補償についての規定があるが、水面権利者以外である自由漁業者については規定がないことから、埋立免許権者として、お答えできる立場にない。
●公有水面埋立法に条文があるということではなく、公有水面埋立法における許認可を行う場合には、提出された申請書に基づき判断する。一方では公有水面埋立法でというのは筋が通らないではないか。
<櫻井港湾課長>・繰り返しになるが、公有水面埋立法では、漁業権者等の水面権利者に関しては同意及び補償についての規定があるが、自由漁業者については事業者の方で対応すべきことと考えているため、埋立免許権者としては、公有水面埋立法に基づき審査するものであると考えている。
●許可漁業、自由漁業についてなぜ無視するのか。埋立法は昭和48年に改正されたが、環境保全に関する規定を設けることに力点が置かれ、「四者の権利以外の財産権」に関しては「利害関係者の意見書提出」のみしか行われなかった。ただし、その保護について国会では論じられ、政府は、「具体的な実害がある場合には当然民法の不法行為責任によりまして損害賠償をしなければならないことになります。したがいまして事前に、そうした方々とは損害賠償を行なうなりあるいは損害賠償の予約を行なうなりというような行為が当然必要になると思います……運用上そうした方々を無視してはならないと思っております」、「運用上、民法の条件等を背景といたしまして、ときには個別の折衝等によりまして解決しながら埋め立てをやっていくというようなことでございます」と答弁している。この答弁に示されるように、埋立法の不備を補うため、埋立法を所管する国土交通省は、実際には、埋立法5条に掲げられていない財産権に対しても、協議を行ない、契約に基づいて補償を行なうよう埋立事業者を指導している。
埋立法の不備を補っているもう一つのものが「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(以下「要綱」という)である。しかし、今まで何回も関係ないと言われてきたのが「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」であって、これには許可漁業も自由漁業も長いことしている場合は補償するよう謳ってある。公有水面とは違うものである、関係ないという今までの答弁と今回の答弁では矛盾しているのではないか。
<櫻井港湾課長>・「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」は、土地収用法等に基づき土地等を収用するなどの法律であり、公有水面埋立法とは、その目的が異なることから、補償の対象となる範囲は異なるため、あくまでも、公有水面埋立法の基づいて審査している。
〇埋立免許にもとづく埋立権なるものに関して、埋立法のどこにも「物権である」とか「物権とみなす」とか規定されていません。この点だけからも、埋立免許取得者が他の自由使用(祝島漁民の許可漁業・自由漁業)を排除できないことは明らかです。
――共同漁業権や入会漁業権が放棄されて新たに市民が自由に入ってくるととても厄介なことになる。むしろ共同漁業権がずっと存続したまま漁業権者に工事に同意してもらったほうが事業者にとって有り難いということです。
水産庁で漁業法の第一人者と言われていた故浜本幸生(前水産庁遊漁調整指導室長)さんもそう指摘されています。電力会社の法規担当の人たちのセミナーで「もしも漁業権を残しておけば、補償金を支払った企業は、漁業権のおかげでその水面を占有できるのに、漁業権を放棄させるとは何事だ」と言ったら、「出席者は皆、頭をかいていました」と書かれています。(「発電所前面海域の法的地位について(財団法人海洋生物環境研究所での講演録」)➡