12月議会質疑(1)

軍事要衝化する山口なのか
イージス・アショア

極東最大化する米軍岩国基地に加え、イージス・アショアや宇宙監視レーダーを山口県に配備すると、矢継ぎ早に軍備関係のニュースが飛び出し、自然環境に恵まれた山口県も何だか軍事的な要衝地となりそうな怪しい雲行だ。

地理的な条件で山口県が選ばれたと喧伝されているが、防衛戦略とは別の次元で配備が決められているようだ。そもそも、あれだけアメリカ押し付けの憲法だから認められないと言っていながら、アメリカからの兵器の押し売りには何の抵抗もなく受け入れるのは矛盾だ。本気で防衛を考えるなら原発を何とかするのが先だ。と思う。

日本政府は、北朝鮮による弾道ミサイル発射に対処すると、地上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)を2基導入。2023年度から運用を開始する方針を示し、その配備先として、山口県萩市むつみ地区と秋田県秋田市新屋地区の陸自演習場を候補地に挙げ,調整に入っているとされている。

弾道ミサイルの脅威は声高に叫ばれているが、外交的な努力が尽くされているのか、「脅威」の具体的な内容がいかなるものか、既に失敗と成功を繰り返し、開発の途次にある「イージス・アショア」システムの性能は信頼できるのか、強力な電磁波を出すと言われているシステムの運用により地元住民にどのような影響を与えるのか、などについて配備候補地とされる住民に対する詳しい説明が全くされないままに、配備計画が一方的に進められていいのか。

県は国から、何時、どこから、どのような説明を受けているのか。

県民感情として、北朝鮮の核ミサイル開発による脅威について不安があることも事実だが、「イージス・アショア」の配備・運用は日本を標的にしたミサイルを迎撃して安全を確保するといった単純な問題ではない。

これは、朝鮮半島の緊張を利用して米国から武器等を購入することであり、軍事的な日米の経済連携を推進することにつながり、かえってアジアの緊張を高めるものだ。

日米両国は、力による対決姿勢一辺倒ではなく、対話を基調とした外交的な努力によって解決をはかるべきだ。

また、購入費は1基当たり約800億円とも言われ、厳しい国家予算において、国民の暮しに直結する社会保障費などが切り下げられる中、このような高額な武器等の購入を容認すべきではない。

現在の軍事的緊張の本質は、朝鮮戦争が終わっていないことに起因する。国際法的には今も戦時で、一時的に休戦しているに過ぎない。この状態が60年余り続いているのは異常。米国はこの戦争の当事者であり、だから北朝鮮は、米国に対抗するために核開発とミサイル開発をやめない。あくまでも〘米朝対立〙だ。それを踏まえれば、弾道ミサイルの迎撃は、日本単独の対処としてではなく、アメリカによる威嚇と軍事行動の一環として行われる以外にはあり得ない。とすれば、万一、武力紛争が発生した場合、アメリカの盾としての迎撃ミサイルシステムが攻撃対象となり、山口県民の生命が危険にさらされる。

軍事的脅威に対して、軍事力で対処することは、緊張関係をますます強め、武力衝突の危険性を高める。

「イージス・アショア」は、山口県萩市むつみはもとより、日本のどの地域にも配備されるべきではない。

そこで、県民の安全確保が口癖の県知事は、政府及び関係機関に対し、次の三点について要請をすべきだが、対処方針の見解を伺う。

①イージス・アショア配備について、県民への説明会等の開催。

②配備予定のイージス・アショアの運用基準。また、北朝鮮が日本以外の他国に向けミサイルを発射した場合、迎撃ミサイルシステムを発動するのかどうかについての照会。

③イージス・アショアの運用で強力な電磁波が発生するとされているが、これにより県民生活や経済、及び環境に対する悪影響への具体的な対処方針についての照会。

総務部長答弁

国から正式な連絡は受けていませんが、県では、この度の報道を受け、防衛省に事実関係の確認を行ったところ、「現在、イージス・アショアを中心に必要な検討を行っているが、どこに配置するかについては、何ら決定していない。」との説明を受けたところです。

次に、政府及び関係機関に対する要請についてです。

お尋ねの3点については、県内が候補地となった場合には、国の責任において、地域住民の理解と協力が得られるよう、丁寧に説明していただきたいと考えています。

 

再質問

イージス・アショア、地上配備型レーダーについては、特に山口県にというお話ではないという事だが、既に大手紙には早くから報道されていますし、具体的に山口県は萩市なになに、秋田県は秋田市なになにと報道されて、話がどんどん進んでいると受け止めていまして、これが、いざできたという時には間に合わないのではないかと思います。

例えば、先月24日に河野太郎外務大臣がモスクワで日露外相会談を行っているが、この場でも、ロシアのラブロフ外相は、日本政府が導入を検討している陸上配備型ミサイル迎撃システム、イージス・アショアについては、アジア太平洋地域の安全保障にネガティブな影響を与えていると、早速、もう外交問題のまな板にのぼっている。ことは山口県民の安心と安全、財産に関わる問題なので、これほど、大手紙が述べているからには、水面下では必ず進んでいる筈で、先手、先手の対応を打っていただきたい。このように感じていますので、再度このことについて、どう対処されるのかお尋ねします。

よく、国のやられる事ということですけれども、これは、よく言われます、国のやられる事、いわゆる公の秩序のためには、個の権利は制限してもいいのではないかと、最後にはこれで押し切られる。こういうことがあってはならないと思いますので、ぜひとも、そのあたりの事も含めまして見解をお聞かせいただきたい。

総務部長再答弁

繰り返しになりますけれども、国からは正式な連絡は受けておりません。

仮に、県内が候補地になった場合には、国の責任において地域住民の理解と協力が得られるよう、丁寧に説明していただきたいと考えております。

宇宙監視レーダー

防衛省は、山陽小野田市の海上自衛隊P3C山陽受信所跡地に、宇宙監視レーダーを設置する住民説明会が11月21日に行われた。

日本の人工衛星の運用を妨害する中国の衛星破壊兵器や宇宙ごみ(スペースデブリ)を監視する航空自衛隊初の専用レーダーで、レーダーの情報を基に衛星の軌道変更などの対策を検討する分析部門は、都内の空自基地か防衛省本省に配置するとし、防衛省は来年度予算案概算要求に宇宙監視システムの設計費として44億円を計上、2023年度からの運用を目指すとしている。

説明会では、人体や生活、環境への影響、他国からの標的にならないか。軍事目的への転用強化ではないか。など住民の危惧する声が出された。

この宇宙監視レーダーについて、県は事前に、当然、国から説明を受けている筈で、マスコミの報道が先行して、沈黙したままだが、どのように国から聞いているのか。情報は県民に全て開示すべきだが。

説明会で、中国四国防衛局の宮川企画部長は、「監視のみを目的としたレーダー」と強調したが、JAXAが、岡山県にある上齋原スペースガードセンターと美星スペースガードセンターで、スペースデブリ等の観測を行っている。       「上齋原ではレーダーにより、美星では光学望遠鏡により、高度36,000kmの静止軌道帯のデブリを観測している。どちらの施設も一般財団法人日本宇宙フォーラムが所有し、JAXAは提供を受けた観測データを分析することで、デブリの軌道や位置を把握している。

JAXAでは、平成30年代前半を目処に、スペースデブリを観測する高性能のレーダー施設を上齋原スペースガードセンターがある場所に作る計画を進め、新しいレーダーは現在の200倍近い探知能力を目指し、10cm級の大きさのデブリを観測できるようにする。一方、光学望遠鏡については能力的に問題がないため、現在の施設の老朽化部分を更新。これまでは既存の施設を利用して観測データを提供してもらっていたが、これからは、JAXAの管轄下で運用を行いデブリの観測を行うのです。」としている。

すでに、JAXAが宇宙ゴミ対策をやっている。さらなる対策を強化しようとしているところに、突然、防衛省が前面に出てくることに宇宙の軍事利用の匂いを感じ取るのは自然のことで、このことについて、県としての見解、また、どのように対処する方針なのか明らかにされたい。

総務部長答弁

①まず、県に対する国からの説明内容等についてです。

宇宙監視レーダーの設置計画については、国において、政府関係機関等との調整が整い、今年度から現地調査を行うことから、本年3月、県と地元山陽小野田市に対し、事前説明がありました。

その後、国は、改めて、7月に山陽小野田市に、また、8月に同市議会に対し説明しており、県では、その都度、国から情報提供を受けたところです。

その内容としては、宇宙状況監視の必要性や施設の整備・運用スケジュール、設置場所とその理由、設置することによる影響等であり、施設の管轄などを除き、11月の住民説明会における資料や説明内容と同様です。

②次に、防衛省が前面に出てくることに宇宙の軍事利用の匂いを感じることについての県の見解と対処方針についてです。

防衛省にレーダー設置について、改めて、確認したところ、「宇宙空間は、安全保障の基盤として重要な役割を果たしており、静止軌道では、通信衛星や気象衛星など自衛隊の活動にとって重要な衛星が運用されているため、宇宙ゴミが衝突する危険などを事前に把握する必要がある。」との説明を受けました。

また、「JAXAはレーダーで低軌道を、光学望遠鏡で主に静止軌道を観測しているが、光学望遠鏡は夜間・晴天時の観測に限定され、常時観測はできない。一方、防衛省が整備するレーダーは、時間帯及び天候に左右されず、常時継続的に静止軌道上の衛星及びその周辺を監視することが可能」との説明もありました。

こうしたことから、この度のレーダーは、宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙ゴミ等を探知・追跡する目的で整備されるものと認識しています。

いずれにしても、この施設については、防衛政策を専管する国が必要と判断し整備するものであり、県としては、その是非を論ずる立場にはありませんが、国の責任において住民に不安を与えることがないよう、地元市や住民に対し十分に説明するなど、丁寧に対応していただきたいと考えています。