2019年2月定例県議会(2)

1 地域内経済循環システムの推進について

(2)地域内経済循環の取組について

市町村消滅論が幅をきかす中、過疎発祥の地島根県では、全く正反対のデータが注目されています。島根県の再生戦略の理論的支柱である藤山 浩先生は、中山間地域の三割以上のエリアでこの五年間に四歳以上の子供がふえており、特に離島や山間部で若い世代のUターン・Iターンが目立っていると報告されています。 島根県の戦略はいたって明確です。地方経済が衰退した真の原因は、中から外への所得の流出。地方において人口を取り戻すには、年間に地域の人口の一%程度の定住増と、その定住増を養える一%の所得の取り戻しさえすればよいというものです。 どれぐらい域外にお金が流出しているか。島根県益田圏域では、域外流出が年間1420億円、これは住民所得の年間総額1556億円に匹敵し、住民の稼ぎをそのまま地域外に差し出していると言っていい状態だったそうです。 地元で買わなくなった、生産をしなくなったことが地域経済に大きな影響を及ぼしています。藤山先生は、「経済は一度きりの取引では終わらず、事業体や部門を超えて連鎖していくもの。同じ金額を投資したとしても、地域内での循環率が異なれば経済効果は大きく違う。初期投資が同じでも、循環率が80%の場合と60%の場合、20%しか違わないが、最終的な需要の合計は二倍になる。」と示しておられます。最初の売り上げや投資額の大小だけでなく、地域の中でどれだけお金が回るかで経済効果が違ってくる。そこに着目し、地域の所得をふやす、取り戻すために、域内生産、域内調達に切りかえていき、地域内でお金が何度も循環するような仕組みを取り戻すことで1%の所得増は実現できると言うのです。 益田市のスーパーマーケットは、地元の農家や事業所の会員と意識的につながり、2011年に237だった会員を2015年には608にまでふやし、地元産を食品部門の総売り上げの15.8%を占めるまでに高めています。 邑南町では、地元産の木質バイオマスエネルギーを利用することで、域外からの灯油の購入額を抑え、エネルギーの面で域内の所得創出にチャレンジしています。また、高校の統廃合が生徒数の減少や子育て世帯や地域経済に及ぼす影響をシミュレーションにより住民に見える化をして、唯一の高校を残す施策に取り組んでいます。  福井県池田町や長野県富士見町でも、地元産、域内仕入れ率を高める取り組みが始まっており、地域内経済循環を取り戻す実践は全国へと広がりを見せています。 そこで、伺います。 本県において吸い上げの経済が進行しているという現状認識と、それを食いとめる施策が必要と考えます。山口県では東は広島経済圏、西は福岡経済圏に取り込まれているがごとき現状があり、域外へお金がどれだけ流出しているのか、そして、どれだけ地元産で調達できるのに域外から調達しているのかについて分析をしたことはあるのでしょうか。 また、全国各地で研究と実践的取り組みが広がっている地域内経済循環の研究と実践に本格的に取り組むべきと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。

総合企画部長答弁

地域内経済循環の取組に関する二点のお尋ねにお答えします。  まず、域外へお金がどれだけ流出しているのかとのお尋ねです。益田圏域における産業の調達を域外流出と捉えられていますが、本県とは産業構造も大きく異なっており、特に、本県の産業全体の中で大きなウェイトを占める製造業の原材料費などについて、これを流出と捉えることは適当ではないと考えています。  仮に、御質問の域外へのお金の流出をそうした経費も含む県全体の移輸入額と捉えれば、平成23年の産業連関表で、約6兆590億円となっています。  その内、どれだけを地域で調達できるかの分析は行っておりませんし、経済のグローバル化が進み、多様な取引が行われる中で、個別の取引を正確に把握し、分析することは困難であると考えます。  次に、地域内経済循環の研究と実践に取り組むべきとのお尋ねです。本県では、これまでも「やまぐち食彩店」や、学校給食等での農林水産物の地産地消の拡大や、間伐材等を活用する森林バイオマスの推進など、様々な分野で、地域内経済の循環を図る取組が進んでいるところです。  また、人口減少が進む中、地域の活力を維持していくためには、地域外から稼ぐ力を高めていくことも重要であることから、地域商社と連携した首都圏等への県産品の売り込み、海外での農林水産物や県産品の販路開拓支援などの取組も積極的に進めているところです。