使用済み核燃料『中間貯蔵施設』の上関町への誘致問題で、反対討論!

8月2日に上関町長が、上関原発建設の見通しがない中で、さらなる原発マネーのおねだりで、新たな地域振興策を求めていたのに応えるとして、中国電力が関西電力と共同で使用済み核燃料「中間貯蔵施設」の立地調査等をしたいと申し出たのを受け、上関町長が即断で、8月18日には受諾した問題が、9/20~10/6で開催された山口県議会で、大きな争点になりました。

これに「反対することを求める」請願が5件提出されました。請願者・5団体は…❶上関原発用地埋め立て禁止住民訴訟の会 ❷原発をつくらせない山口県民の会❸上関原発を建てさせない山口県民連絡会 ❹憲法を活かす市民の会・やまぐち ❺市民連合@やまぐち    この5本の請願が付託された「産業観光委員会」では、全員一致で否決。・・・

産業観光委員会委員長報告・・・本委員会に付託された請願第1号から第5号(使用済核燃料「中間貯蔵施設」の上関町への誘致に反対することを求める請願)については、上関町は、中間貯蔵施設の設置について、事業者から具体的な計画が提示された後に判断するとしており、現在はあくまでも、施設が立地可能かどうか、その調査が実施されているところである。また、客観的な判断がなされるためには、中間貯蔵施設に関する正確な知識や情報の提供が行われ、住民や周辺自治体への正しい理解が図られることが大前提であるが、具体的な根拠を示すこともなく、中間貯蔵施設は危険である、最終貯蔵施設となる可能性が高いなどと一方的に決めつけた主張に到底賛同できないとの意見や、地元や近隣市町にも十二分に説明がなされていないうちから、県議会としての意見を行使することは、時期尚早との意見があり、採決の結果、賛成なしにより、いずれも不採択とすべきものと決定いたしました。

議会最終日10/6に、「使用済み核燃料『中間貯蔵施設』の上関町への誘致に反対することを求める」5本の請願を「採択すべき」とする立場で、⚫︎日本共産党(藤本・宇部)、⚫︎社会民主党・市民連合(中嶋・山陽小野田)、⚫︎新政クラブ(合志・山口)の3会派。「不採択にすべき」の立場で…⚫︎県政会(酒本・下関)、⚫︎自民党(岡・萩)が討論を行いました。 本採決では…6対40で、請願5件は不採択となりましたが、一人会派の自民党県議が請願採択すべきと討論されたり、閉会後に自民党県議からもあんたの討論はわかりやすかった。原稿をくれと言ってきたりで、まだまだ闘いはこれからです。

以下、小生の討論です。少し長いですが、ご覧いただき、ご意見ご教示をいただければ幸せます。

お疲れさまです。社民党・市民連合の中嶋光雄です。提案をされています議案第2号に反対します。あとの議案及び意見書案には賛成をいたします。また、請願第1号から5号についての委員長報告は不採択でしたが、採択すべきとの立場で討論に参加します。

まず、議案第2号 令和5年度の建設事業に要する経費に関し市町が負担すべき金額を定めることについてです。この問題は、そもそも地方分権改革推進法に基づき、平成19年4月、内閣府に地方分権改革推進委員会が設置され、同委員会の勧告で、国と地方の役割分担の考え方、基礎自治体への権限移譲をはじめ、地方行財政に関する全般的・抜本的な改革の必要性が挙げられ、国を巻き込んでの議論が白熱した問題です。こうした流れの中で、当時の本県の二井関成県知事が、全国知事会の国直轄事業負担金制度改革プロジェクトチームリーダーとして大変に御苦労され、平成23年度には、維持管理費負担金の全廃にまでこぎ着けられていますし、全国知事会の直轄事業負担金制度の改革に関する申合せで、その中に、国直轄事業負担金は廃止すべきである、さらには、市町村負担金は直轄事業負担金制度の改革の趣旨を踏まえ、同様に見直すと取りまとめられています。しかし、全国知事会が国に対して毎年行われています、施策及び予算についての提案・要望の中で、直轄事業負担金制度の改革の確実な推進の要望事項が、平成30年度から削除されてしまいました。全国知事会も国会も、共にかつての民主党政権時代の熱気はどこへやら、その後、この事案は取り上げられていません。とはいえ、これらの制度の廃止や地方への権限と財源の移譲は、国と地方の役割分担の見直しにもつながり、真の地方分権改革のためにも、速やかに実現されるべき事案です。さて、提案されています市町負担額の総額は、約29億3千万円超にも上っています。県、市町ともに厳しい財政事情ですので、地域主権の確立に向けて、この問題の政府要望の復活・実現に向かって、村岡知事におかれましては、全国知事会等を通じて、負担金制度廃止について声を上げていただくよう要望を申し上げ、本議案には反対をいたします。

請願第1号~5号について、中間貯蔵施設を一言でいうと行き場のない使用済み燃料の仮置き場。行き場のないというのは、本来の行先とされる再処理工場に運び出せない事態が起こっているためです。使用済み核燃料を青森県六ケ所村にある再処理工場に運んで、中に含まれているプルトニウムを回収し、再び燃料として利用する計画になっていたのですが、プルトニウムを利用するはずであった高速増殖炉の開発は頓挫してしまいました。実験炉、原型炉、実証炉と段階を踏まないと実用できる炉に至りませんが、第一段階の「常陽」は2007年から事故停止中。第2段階の「もんじゅ」は事故や不祥事が続き2018年に廃止措置。当然、実証炉など計画の目途すら立っていません。このためプルトニウムは当初の予定通りには消費されず、日本はすでに46トンものプルトニウムを保有しています。8キロあれば長崎型原爆が作れると言いますから、日本は潜在的な核大国なのです。この余剰プルトニウムには国際社会の厳しい目が向けられています。事故と不祥事続きで再処理工場は2021年度上期、MOX燃料加工工場は2022年上期に竣功の計画だったのを、なんと26回目の完成時期の先送りで、次の完成時期は24年度のできるだけ早期とする方針が発表されていますが、再処理を待つ使用済み燃料で受入れプールはもう満杯になっています。仮に、再処理工場が完成しても、フル稼働することのできぬ深刻な事情があります。2018年に、原子力委員会は「日本が保有する原爆材料のプルトニウムが減らない限り、六ヶ所再処理工場を操業させない方針」へと転換しました(2018.7.31「我が国におけるプルトニウム利用に関する基本的な考え方」の改定)。岸田首相といえども、日本の余剰プルトニウムに神経をとがらせる米国や周辺諸国の眼があり、これを恣意的に撤回することなどできません。つまり、フル稼働はできないので、この渋滞はなかなか解消されません。

蛇足ながら、プルサーマル計画のMOX燃料はフランスからの輸入で、アメリカから輸入するウラン燃料の10倍の価格だそうで、しかも、プルサーマル計画での使用済み燃料は、プールの寿命を超える長期間の冷却が必要で当初から行先がなく、原発サイトでの永久保管が宿命づけられた代物のようで、電力会社も本気でやる気はなく、「核燃料サイクル」を取り繕うための見せかけに過ぎないと、専門家はみています。

一方、各原発サイトにある使用済み燃料プールの容量には限界があって、実はもうそんなに余裕がなくなってきている。関電の使用済み燃料プールは再稼働すると、5年~7年で満杯になると試算されています。トイレなきマンションと言われてきた原発が、文字通り詰まって流れなくなるのです。そこで計画されているのが中間貯蔵施設です。別に仮置き場を作ることで。とりあえずこの「詰まり」を解消しようというのです。具体的には輸送時にも使用する金属容器キャスクに使用済み燃料を入れコンクリート建屋に保管します。原発の専用港から船で中間貯蔵施設の専用港に運ばれ専用道路を使って保管建屋に運ばれることになります。船が着くたびに、周辺は厳重警備の戒厳令状態になるでしょう。立地条件によっては日常生活や経済活動への影響も考えられます。

原発の格納プールは水の中に貯蔵する水冷式ですが、中間貯蔵施設は自然に流れる空気による空冷式です。地震による水抜けなどの心配がないため安全性は向上します。一方でポンプなどを必要としない為、立地しても多くの雇用を生むことはありません。また、中間貯蔵施設の固定資産税や使用済み核燃料税収入を期待する声も聞こえてきますが、わずかな固定資産税の増も地方交付税交付金と相殺されてしまいますし、核燃料税の多くは、放射能の影響調査や放射線監視など核施設が存在するために必要となる仕事に使われますので、期待通りにはならないでしょう。

高速増殖炉計画が旨くいかず、最終処分計画も見通しが立たない中で、行き詰まりが表面化してきました。それにもかかわらず再稼働を強行せんがための苦肉の策が中間貯蔵なのです。つまり問題を拡大再生産してしまう装置であると言えます。

中間貯蔵施設の最大の問題は、名前に「中間」とついているものの、実際には永久貯蔵になりかねないということです。最長50年とされている貯蔵期間が終了した時には、六ケ所再処理工場は閉鎖されており、搬出できる再処理工場はありません。高速増殖炉は実用化される見通しもなく、第二再処理工場が建設される目途も全く立っていません。

危険性に関していうと、確かに原発の様に、暴走し短時間で拡大するような事故は起こりにくいかもしれません。しかし、わずかな放射能漏れを検知し、その段階で対処するという作業がミスなく繰り返される必要があります。高度な緊張を長時間にわたって維持することのコストとストレスは相当なものであるといえます。さらに保管が長期に及ぶ可能性と放射能の総量が原発に比べてはるかに大きいことを考慮すれば、中間貯蔵施設が抱える潜在的な危険性は決して小さいとは言えません。このことが「中間」という安易な言葉で覆い隠されたまま立地活動が続けられています。

国は、2015年10月に、使用済み燃料対策に関するアクションプランを策定しました。国と電力会社による協議会の設置や電力会社に貯蔵能力増強を要請しています。まさに国策民営を押し付けるプランです。

これまでの関電は中間貯蔵施設立地について、和歌山県御坊市では、市議会に誘致を検討する特別委員会が設けられ、候補地にされる自治会の市民が視察旅行に連れ出されるなど工作が続きました。しかし市議会の特別委員会は2010年に解散、推進派の中心だった議員も2011年の選挙で引退してしまいました。高レベル処分場の適地マップが公表された際に、仁坂和歌山県知事は、「打診されることも嫌」と異例なコメントをしています。

経済産業大臣は、各社がより連携・協力して取り組みを加速すること。共同の貯蔵も考えては・・・これに、電事連会長は、電気事業者共通の課題であるとの認識のもと、より連携・協力して取り組みを進めていく。と、応じています。

今回の、上関町への中間貯蔵施設問題は、上関町長の判断だけで済ます問題ではありません。国が後ろに控えている大問題との認識での対応を山口県としてすべきです。

核燃料サイクルというアメリカには50年前に見限られ放棄された計画にしがみつく日本は、実は原子力後進国だ。英語圏では福島第一原発事故ではなく福島核災害Fukushima Nuclear Disasterと言われており、「福島核災害では、4号炉燃料プールに熱い使用済み核燃料が大量に存在し、その状態確認も電力と水の供給も長時間途切れたことから、アメリカは燃料プールにおける使用済み核燃料溶融を強く懸念し、横田基地からアメリカ市民の緊急脱出を行った」…まさに奇跡的な偶然によって箱根以東の東日本全域が無人の核の荒野となる最悪の事態が避けられたのだ。と言うことを忘れてはならない。

また、9月20日に、中国電力社長が、中間貯蔵施設は「誰も100%安全とは言えない」としつつ、「最終処分場には絶対なりえない」と答え、「核燃料サイクルを、より確実に回すために非常に重要」とも語った。とのインタビュー記事を朝日新聞が報じています。中電社長の「絶対なりえない」は建前に過ぎませんね。そもそも核燃料サイクルが破綻している中で原発を稼働させようとするから中間貯蔵が必要になってきているわけですから。「核燃料サイクルをより確実に回すために中間貯蔵が必要」などと言うのは、本末転倒というか、論理破綻というか、現状認識のいい加減さを露呈しているのではと思わざるを得ません。

核燃料サイクルが、実現しようがしまいが核のゴミの最終処分が、そう簡単に実現しないという事実に変わりはありません。使用済み核燃料が行き場を失い。大渋滞を起こそうとしている今こそ、この根源的な問題と正面から向き合う、絶好の機会なのです。再稼働せんがために、その場しのぎで仮置き場を作って、さらに多くの核のゴミを生み出し続けるというのは、大変無責任な行為です。核のゴミを私たち世代の責任であると考えるのであれば、なによりもうこれ以上核のゴミは増やさないことです。

電力会社の会計帳簿上は使用済み核燃料は、有用資産「リサイクル資源」として計上されていますが、やがて負の資産(超危険で厄介なだけの廃棄物)となります。なにしろNUMOは使用済み核燃料=高レベル廃棄物と見なしています。

その場しのぎの中間貯蔵に反対します。そして、これまでの計画がすでに破綻してしまっていることを直視するよう訴えます。

以上の事などにより、請願第1号~5号について、委員長報告は不採択ですが、採択すべきである。是非ともご賛同をお願い申し上げ、討論を終わります。

最後まで、お付き合いいただき恐縮です。ありがとうございました。