カスタマーハラスメントについて

2024年6月県議会

5、カスタマーハラスメントについて

カスハラについて、サービス業などの労働組合・UAゼンセンが実施の最新のアンケートによると、カスハラの被害にあったことがある人は、全体の46.8%で、印象に残っている顧客からのカスハラ行為は、「暴言」「威嚇・脅迫」「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」「長時間拘束」こうした行為が上位を占めています。

また、地方公務員で組織された自治労が2021 年 8 月に発表した資料でも、過去 3 年 間に住民から迷惑行為や悪質クレーム(カスタマーハラスメント)を受けた人は約半数の46%、職場で受けた人がいるというケースを含めると76.3%となり、約4 分の3を占め、職場の同僚を含めると、大多数の職員がカスタマーハラスメントを受けている実態が明らかになっています。

まさに、客からの暴言やクレームなどの迷惑行為、「カスタマーハラスメント」が深刻化しています。パワハラ(労働施策総合推進法)やセクハラ(男女雇用機会均等法)、マタハラ(育児・介護休業法)など法律に定義や責務が記載されているハラスメントとは異なり、いわゆる「カスハラ」には法律上の記載はない。

このカスタマーハラスメントを放置できない問題とみて、東京都は昨年10月に経済団体、労働団体、専門家でつくる「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」を立ち上げ、カスハラ防止のための有効な手段として条例とガイドラインを策定する方向で議論が進められている。また、愛知県でもカスハラ対策の議論が進んでいる。

そこで、本県におけるカスハラに対する認識と対策について?お尋ねです。

まず、最初の一歩として、県職員の名札及び執務室入り口の配席表の写真掲示を廃止されては?お尋ねです。

総務部長答弁・・・本県におけるカスハラに対する認識と対策についてです。

県においても、業務遂行に支障が生じるような迷惑行為が生じており、職員が安心して働ける職場づくりを進める点からも、こうした行為には組織として適切に対処していくことが重要であると考えています。

このため、各種研修を通じ、ハラスメントに対する職員の対応力の向上を図るとともに、迷惑行為を受けた職員の心のケアを目的に、本庁及び県内各地域にハラスメント相談窓口を設置しているところです。

次に、県職員の名札及び執務室入口の配席表の写真掲示を廃止してはどうかのお尋ねです。

名札や配席表の写真については、県民サービスの観点から一定の効果があると認識しており、現時点で廃止することは考えていません。


新たな「人材育成・確保基本方針策定指針」について

2024年6月県議会

4、新たな「人材育成・確保基本方針策定指針」について

総務省は、昨年12月に1997年に策定された「地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針」を全面改訂し、「人材育成・確保基本方針策定指針(以下「総務省指針」という)」を策定し公表するとともに、すべての地方自治体に対し基本計画の改定(策定)を求めている。

まず、「総務省集計によると、教員や警察などを除く一般行政職のうち、2022年度に主に自己都合で仕事を辞めたのは1万2501人。13年度は5727人で、約10年で2.2倍となった。待遇への不満や業務量の増加が影響しているとみられる。30代までの若手が全体の3分の2を占め、住民サービス低下や組織弱体化が懸念される。(中略)22年度の普通退職者の年齢別は、30歳未満が4244人で13年度比2.7倍、30歳以上40歳未満が4173人で同3.1倍となり、若手の増加が鮮明だ。(共同通信 4月20日)」と、報じられた。

そこで、本県の「人事行政等の運営の状況」から定年前退職者の最新公表の過去5年間の推移をみると。H30年度・55人、R元年度・61人、R2年度・49人、R3年度・71人、R4年度・96人(前年度比35%増)となっており、概ね増加傾向である。

「若手の退職、県職員も増加」との報道。また、参考資料②のとおり、総務省「ポストコロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会」資料でも、国家公務員の若年層職員の離職理由は、「自己成長」「長時間労働」が上位を占めるなど、人員確保・離職防止の面からみれば、賃金面も重要な課題である一方、リスキリングやスキルアップの機会や長時間労働の是正といった、人材育成、職場環境課題に取り組むことも人材育成の観点からも重要な課題と提起されている。

そこで、先述した結果に関し、年代別退職者の把握や退職理由の分析について、所見をお尋ねします。

その上で、新たな「総務省指針」に基づく「人材育成・確保」にかかる県の基本方針の改正・策定についての考え方をスケジュール感を含め、お聞かせください。

なお、当然、方針策定に際しては、十分な検討と実効性の両面が求められていることから、すべての職員の働き方にも大きな影響を与えることは必然であり、方針策定に現場の職員・労働組合の参画は必須と考えますが、こうした配慮についても、お聞かせください。

総務部長答弁・・・「人材育成・確保基本方針策定指針」についての数点のお尋ねにお答えします。

まず、年代別退職者の把握や退職理由の分析についてです。

お示しのあった、本県の過去5年間の定年前退職者のうち、知事部局については20代が52人、30代が51人、40代が35人、50代が92人となっています。

その理由は、結婚や家業の継承、キャリアアップに向けた転職等、様々ですが、中には、自分の思いと実際の職務との相違といったものもあり、県としては、こうした退職を防ぐためにも、職員が業務にやりがいや成長実感を得られ、働きやすい職場づくりを進めていくことが重要と考えています。

次に、「総務省指針」に基づく「人材育成・確保」にかかる県の基本方針の改正・策定についての2点のお尋ねにまとめてお答えします。

県を取り巻く環境が大きく変化する中、人材の育成・確保は重要であることから、本県の人材育成基本方針についても、国の新たな指針に沿って、必要な検討を進めることとしていますが、具体的なスケジュールや進め方については、現在お示しできる状況にありません。

再質問・・・日本総合研究所の推計では、2045年に現行の水準の行政サービスを維持するには、地方公務員数の充足率は78.0%まで低下。町村は64.6%で、小規模自治体ほど人手不足が深刻なる。と。そこで、新たな総務省指針に盛り込むべき考え方の内、「市町の人材確保への県の役割強化を含む広域連携体制の構築」、「市町の専門人材の確保に係る県の支援」について、今後は、単独市町での確保のみならず、広域での確保策の検討、特に県が、専門人材の確保を支援していくことが重要で、市町がその行政需要に対応できるよう、県において必要な人材を確保の上、市町支援業務にあたらせたり、市町職員として派遣するなどの支援を検討していくことなどとなっている。急務のデジタル人材のほか、技術人材、医療・保健人材等の重要性が増大しているが、県として対応は?

「山口県版複線型人事制度」が優良事例として照会されているが、PDCAを回して、当面する課題は何か?

総務部長答弁・・・市町における専門人材の確保支援についてお答えします。これまでも、県が主催するデジタルに関する研修会への市町職員の受入や、国の求めに応じ、災害時に、県の技術職員を市町に派遣することを念頭に置いた人材確保に努めているところです。

県としては、引き続きこうしたことに取り組むとともに、国の新たな指針に沿って、必要な検討を進めてまいります。

次に、複線型人事制度についてです。

本県では、複線型人事制度として、税務や用地取得事務などの特定分野において、公募によるエキスパート人材の育成に取り組んでいるところです。

「エキスパート認定」された職員は、その分野の中心人材として活躍している一方で、特定の業務経験が長期化し、配属先が限られる中で、モチベーションをどう維持するかといった課題があると考えています。

 その課題に対しましても、職員の意向をきめ細かく把握しながら、効果的な人事配置に努めるなど、業務にやりがいや成長実感を得られる制度となるよう取り組んでまいります。


宇宙状況監視レーダーについて

2024年6月県議会

3、宇宙状況監視レーダーについて

アメリカは宇宙空間での軍事作戦、監視、GPSシステム、金融取引などさまざまな分野で衛星通信にどの国よりよりも大きく依存しています。

日本でも、2008年に宇宙基本法を成立させ、宇宙開発利用は、…我が国の安全保障に資するよう行わなければならない。とし、「平和利用原則」を破棄し、「非軍事」から「非侵略・防衛」に舵を切り、第2次安倍政権で宇宙に関する包括的日米対話で、安全保障・軍事が宇宙開発の最重要課題、宇宙状況監視、海洋状況把握、宇宙と地上の3次元的ネットワークの構築~積極的平和主義にもとづく宇宙安全保障計画~など段階的にエスカレートさせています。

そうした中、山陽小野田市に、赤道上空の日本の静止衛星に宇宙ゴミが衝突しないように監視する「宇宙状況監視レーダー」を防衛省が設置する計画が浮上。

これまで、①2017年11月、②2019年8月、③2021年12月の3回しか住民説明会は開かれず、2回目は「施設整備工事の概要説明」にすぎず、防衛省による住民説明会は実質2回のみで、しかも住民からの、「レーダー電波による健康影響や有事の際に敵の攻撃目標になる可能性」などの不安や疑問には、まともに答えないままで建設が強行され、いよいよ今年3月末までにレーダーの運用を開始する予定でしたが、資材不足によるとして運用開始が今年度にずれ込んでいます。

この間、(本会議でも一般質問で取り上げ、)「単に宇宙ゴミを監視するだけでなくロシアや中国の不審な衛星を監視するもの、また、赤道上空の静止衛星軌道だけでなく、日本上空からオーストラリア上空を8の字を描いて周回する準天頂衛星「みちびき」をも監視。さらに問題は、埴生の宇宙状況把握(SSA)レーダー基地が、宇宙領域把握(SDA)体制(中露などの衛星の運用・利用状況及びその意図や能力を把握するための監視衛星打ち上げ)と連動して米軍と情報共有するなど明らかに軍事基地化ではないか。また、レーダーによる健康被害が出ないよう国に詳しい説明を求めるべきだ。」と質問してきましたが、答弁は、「防衛は国の専管事項。国の責任で、地元市や地域住民に安全性等を十分に説明するなど丁寧に対応してもらいたい」などの答弁に留まっています。

地元では、「宇宙監視レーダー基地建設に反対する会」が組織され、昨年9月に県知事宛に、「電磁波の常時モニタリングやレーダー基地直下の活断層調査など」を防衛省に要請するよう申し入れましたが、その後の「会」と中国四国防衛局との話し合いの中で、山口県からは何らの要請も受けていない。とのことです。

そこで、改めてお尋ねです。

電波自体の健康への影響について、レーダーの出力の程度が不明であることに起因する漠然的不安が拭えません。例えば既往の国内レーダーに比べてその程度はどの程度で、なぜその程度では健康影響はないといえるのか。仮に軍事機密等のゆえに詳答できないとされる場合であっても、この漠然的不安の根幹は“高速で移動する小物体を4万キロも離れた地点から詳細に捉えるのだから(周辺環境に影響が出かねないほど)極めて高い出力で照射しているのではないか”等の率直な疑問があるので、例えば既往の民生用等の電波の到達距離と出力の関係、その健康影響との関係はじめ推測可能な関連事例を可能な限り援用して、演繹して実態を理解できるよう。防衛省への照会を求めたい。お尋ねです。

また、中国四国防衛局から本年3月28日の「会」への回答で、「運用開始前にレーダーが出す電波をレーダー周辺で実測を行う。実測における行政や市民の方々の立ち合いについては、市とも相談し検討する」とあった。山陽小野田市からも実測への立ち合いの要請を行ったと聞いている。

そこで、運用前の実測について、期日、実測方法、場所及び個所数、について明らかにするよう。県から防衛省に照会されたい。お尋ねです。

さらに、問題は、2021年12月におこなわれた防衛省の住民説明会では、令和8年度までにSSA衛星を打ち上げる予定。との説明だったが、参考資料①のごとくSDA衛星の打ち上げにと、住民に何らの説明も無く、軍事的グレードアップが図られているのは何故か?住民軽視・無視そのものではないか?照会されたい。

総務部長答弁・・宇宙状況監視レーダーに関する3点のお尋ねに、まとめてお答えします。

まず、電波の健康への影響について、国からは、レーダーの電波については、事前の検証により人体に影響を及ぼさないための基準値を下回っており、また、レーダーの運用前にその確認のための実測を行い、運用後も定期的に検査を実施すると説明を受けています。

また、レーダー運用前の実測について、国からは、電波の実測時期等について、現時点で確定的に申し上げられないが、レーダーの運用開始前に、電波の実測を行うと聞いています。

さらに、住民に何らの説明もなく、軍事的グレードアップが図られているのではないかについては、国からは、当該レーダー施設は、SDA体制構築にあたっても、宇宙ゴミや不審な衛星等を監視する目的に変更はなく、新たな役割は追加されていないとの説明を受けています。

こうしたことから、いずれについても県から国に照会する考えはありませんが、当該施設は、宇宙政策を推進する国が必要と判断し整備を進めているものであることから、国の責任において、地元市や地域住民に安全性等を十分に説明するなど、国に対し、丁寧な対応を求めてまいります。

再質問・・・元々JAXAのSSAレーダーは、一番遠くは1,350kmまでを観測することができましたが、新しいSSAレーダーは、今よりも小さい物体を観測できるよう、観測能力を向上させ、現在は高度650kmにおいてソフトボールサイズ(直径10cm級)の物体を観測できるようになりました。

そのために、レーダーアンテナのサイズを大きくしたり、より出力が高く、より長いパルスを採用し、最大処理距離も3000kmまで拡張しました。
つまり、JAXXは出力も高くして最大処理距離を伸ばした。と言っている。

宇宙監視レーダーは上空36,000Kmを監視するもの。防衛省が説明する「微弱な電波」を発するだけだ。との説明には到底納得できない。改めて、電波の影響等について照会すべきだが?

総務部長答弁・・・繰り返しになりますが、レーダーの電波による健康への影響について、国からは、「事前の検証により人体に影響を及ぼさないための基準値を下回っており、また、レーダーの運用前にその確認のための実測を行い、運用後も定期的に検査を実施する」と説明を受けています。

このため、改めて、県として国に照会することは考えていません。

再質問・・・住民には「防府北基地レーダー地区(旧海上自衛隊 山陽受信所 跡地)」と説明しているにもかかわらず、土地利用規制法の4回目の注視区域指定の候補では、(区域)山陽小野田市・(名称)小月航空基地のままとなっている。これは、県の無関心さに乗じた、防衛省の恣意的な住民への情報隠しでは?防衛省に照会すべきでは?

総合企画部長答弁・・・土地利用規制法、たぶん重要土地等調査法のことだと思いますけども、この4回目の注視区域の指定の候補で、「小月航空基地」のままになっているが、これについて防衛省に照会すべきだとのお尋ねですが、重要土地等調査法に基づく注視区域の指定は、これまで指定が4回行われ、対象の施設、区域が公表をされています。

4回目の指定で、小月航空基地は区域指定をされておりますけれども、山陽小野田市の宇宙状況監視レーダーに係る区域は指定されていないものと承知をしております。


JR美祢線の早期復旧について

2024年6月県議会

2、JR美祢線の早期復旧について

JR西日本は、山陰本線の復旧方針を3月に発表したが、美祢線は、村岡知事自らがJRに出向かれ、厚狭川の改修計画を説明・示されているにもかかわらず、いまだ復旧方針すら示していません。ばかりか、5月末の美祢線利用促進協議会総会で、JR西日本中国統括本部広島支社長が、「単独での復旧は非常に難しい。地域にふさわしい公共交通について議論する部会設置を。」と発言。これは法定「協議会」ではない利用促進協議会の会合に「便乗」した、廃止提案ではないか。

JR西日本の業績は急回復。今年3月期の連結決算を見ると、営業収益は前期比17.2%増の1兆6,350億円、営業利益は同114.1%増の1,797億円、経常利益は同127.4%増の1,673億円になっています。

にもかかわらず、美祢線復旧に係る経費など一切示さずに、「公共交通の在り方議論」を持ち込もうとすることに怒りを覚えます。

まさに、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律により国が組織する「再構築協議会」創設へ引きずりこもうとする意図的発言ではないか?県の認識は?お尋ねです。

JR美祢線は、昨年6月末からの大雨での被災さえなければ今年3月に全線開通100周年記念事業が盛大に行われていた筈で、残念でなりませんが、6月県議会に先立ち、知事と県議会議長を先頭に、令和7年度予算編成及び政策決定等に関する「国への提案・要望」を行っていただき、そのなかに「JR 美祢線及び山陰本線の早期完全復旧」が盛り込まれています。

そこで、特に、JR美祢線の早期完全復旧に、今後、具体的にどのように取り組まれるのか、お聞かせください。

観光スポーツ文化部長答弁・・・JR美祢線の早期復旧についての2点のお尋ねにお答えします

まず、美祢線利用促進協議会総会で、JRが「地域にふさわしい公共交通について議論する部会設置を」と発言したことは、国が組織する「再構築協議会」創設に向けた意図的発言ではないかとのお尋ねです。

JRからは、現時点では、再構築に関する法定協議会の設置を求めることは考えていないと聞いており、県としては、御指摘のような発言とは認識をしていません。

次に、美祢線の早期完全復旧への取組についてです。

県としては、現に鉄道が運休し、地域住民等が不便な移動を余儀なくされている状況は早期に解消する必要があると考えており、復旧に向けた議論を前に進める観点から、地元の現状や沿線自治体の意向も踏まえながら、JRから提案があった部会の設置を含め、今後の対応を検討してまいります。

再質問・・・美祢線について、国鉄改革の際、事業用固定資産の承継や税金の投入が行われた経緯に加え、JRの経営状況が急回復していることから、早急にJRに復旧方針、経費及び期間などを出すように攻めるべきではありませんか。

その上で、道路は都会の高速道路の有料区間以外はみな赤字ではありませんか。道路も学校も空港も港も維持費はみな税金です。先進国では日本だけが鉄道に国費を投入しないのはなぜか。国の関与での上下分離方式の検討を含めて要望するべきではありませんか。

観光スポーツ文化部長答弁・・・まず、「JRに対し復旧の方針や経費などを示すよう伝えるべきではないか」との御質問です。

5月に行われました、美祢線利用促進協議会総会におきまして、JRから、JR単独での復旧は困難との考えが初めて示されたことを受けまして、県は、その場でJRに対して復旧費用や復旧に対する考え等を示すよう求めたところです。

次に、「国が国費を投入して上下分離方式を含めて検討するよう要望しないのか」とのお尋ねです。

先ほども答弁申し上げましたとおり、美祢線につきましては、地元の現状や沿線自治体の意向も踏まえながら、JRから提案があった部会の設置も含め、今後の対応を検討することとしており、現段階お示しのような要望を行うことは考えておりません。


国の指示権拡大について

2024年6月県議会

1、国の指示権拡大について

非常時に自治体への国の指示権を拡大する「地方自治法の改正」ついては、日本弁護士連合会をはじめ多くの団体・個人からの反対・危惧・慎重審議を求める声が上がっています。

2000年施行の地方分権一括法で国と自治体の関係は「対等協力」ともなっています。それを「主従関係」「下部機関」のように変質させてしまっています。

指示権の要件も曖昧で、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生」した場合や、さらに「発生するおそれがある」場合にまで広げられ、実質的に過剰な裁量・恣意を国に認めさせることになってしまいます。

さらには、この間の大規模災害や感染症への地域状況の総括もなく、「国民の生命等の保護のために」と「非常事態」の法的拘束力を国が持ち、しかも国会への事前承認は「緊急性に支障がある」として拒否されてもいます。

東京都世田谷区の保坂展人区長は、コロナの流行初期、国がPCR検査の拡充に消極的だったため、区が積極的に検査した事例を紹介し、自治体の判断を飛び越えて国に強い権限を持たせる危険性を指摘。「国がいつも正しいわけではない」と。また、住民に最も近い市区町村を飛び越える形で、緊急時にそれぞれの地域の住民の命や暮らしを守る最善の指示を国が出せるのかを疑問視する首長の発言が相次いでいます。

そこで、この国の指示権拡大に関する県の所見をお尋ねします。

このままでは、国は大規模災害や感染症を口実にしているものの、その「非常事態」は「戦争事態」の口実になりかねません。

事実、今月初旬に自宅で食事をしながらTVを見ていると、耳に飛び込んできたのは、“九州地方知事会で、内閣官房が「外国からの武力攻撃・避難計画策定を要請」″でした。・・・慌ててスマホで画面を撮影。

内閣官房から、外国からの武力攻撃に備え、「沖縄県からの避難を受け入れる体制をつくるよう九州各県と山口県に要請」「避難当初の約1か月で必要・・・輸送手段の確保、収容施設の提供、食品の調達など」「自治体と事業者の役割分担も含めて整理するよう求める」「訓練の1つの想定として、沖縄県の市町村と受け入れ先となる県の組み合わせを始めて提示」「石垣市、福岡空港を経由して、福岡県・大分県・山口県に避難」「各県、来年2月ごろまでに初期的な計画づくり進め3年間かけて“受け入れ基本要領”の作成を目指す」でした。

台湾有事・中国の脅威をことさらに煽って、石垣島・南西諸島に、陸上自衛隊で一番新しい駐屯地を造り、ミサイル部隊を配備するから、こうした対応を迫られるのであって、まさに、国の指示権拡大の先取り。押し付けではないか。この件に関する県知事の所見及び対応を尋ねます。

村岡知事答弁・・・中嶋議員の御質問のうち、私からは、国の指示権拡大に関する所見について、お答えします。

先般の新型コロナウイルス感染症への対応では、個別法で想定されていなかった事態が生じ、それに対処する中、国と地方の役割分担について課題が残されました。

この度の地方自治法の改正は、そうした課題を踏まえ、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合における、国と地方の関係の特例として、国の補充的な指示の規定が盛り込まれたものです。

この指示は、個別法で指示ができず、国民の生命等の保護のために特に必要な場合に限定的に行われる、どこまでも補充的なもので、また、あらかじめ地方自治体に意見等を求めるとされていることから、国と地方を対等とする地方分権の基本原則から外れるものではないと考えています。

 さらに、全国知事会からの要請も踏まえ、指示を必要最小限のものとすることや、事前に関係自治体と十分に必要な調整を行うことなど、地方自治の本旨や地方との対等な関係を損なうことのないよう、附帯決議も行われているところです。

こうしたことから、この改正法については、今後、地方公共団体の自主性・自立性に十分配慮しながら、適切に運用が行われるものと考えています。

 

総務部長答弁・・・国の指示権拡大についてのお尋ねのうち、国からの避難計画の作成要請についてお答えします。

 この度の要請は、国民保護法において、都道府県が主体的な役割を担うとされている避難住民の救援に係るものであることから、国の指示権拡大の先取り、押し付けとのご指摘は当たらないと考えています。