国の教育無償化と県の方針は(12月議会質疑3)

先の衆議院選挙での各党公約の中に教育費の無償化について、それぞれ言及されていました。これはほかの先進諸国に比べて、日本の教育予算が大きく見劣りするということが永年指摘されてきたからです。

実際、経済協力開発機構OECDによると、2014年の国内総生産に占める公的教育費支出の比率は、比較可能な先進諸国34か国中、日本が最低であったという結論が出ています。他方、現在、政府において検討が進められている教育費の無償化は、幼児教育・保育の無償化だけで8000億円、大学など高等教育の無償化に7000億から8000億円、さらに、その他の対策と合わせ2兆円規模の財源が必要とされている。

財源確保の方法は、様々な意見があるものの、日本の財政状況を考えれば容易に捻出できる額ではない。

この点、巨額の支出に対する政策目的と効果を明らかにする必要があります。幼児教育・保育の無償化を否定する訳ではありませんが、その前に対応する施設や保育士の量や質は確保できているのか。結果として待機児童が増えることにならないかとの懸念もある。

また、文部科学省の資料、「高等教育の一体改革について」では、高等教育の効果として、イノベーションの創出と生産性向上、格差や貧困の是正、少子化対策、地方における教育機会の確保などが挙げられています。経済学でいえば、高等教育の公的負担の根拠として挙げられているのは、外部効果です。高等教育を受けた者が、高等教育を受けなかった者あるいは社会全体に及ぼす効果です。

高等教育の無償化は、意欲はあるが経済的な理由で大学進学を諦めている者には、大変効果的ですが、意欲や学力を問わないまま大学進学を奨励することに主眼を置けば、日本の教育水準は低下し、入学者の減に悩む大学を救済することにしかならなければ本末転倒になる。また、このような状況により無償化で入学する学生たちが、教育費が税金で賄われていることを認識して、全ての者が外部効果を発揮できる人材となれるのか疑問に思うところだ。

北欧諸国では、授業料が無償化されている一方、入学しても勉強についていけず、落第者が多いという厳しい仕組みとなっており、今の日本で、そのような厳しい仕組みを、ただちに取り入れることは難しいように思う。

日本国憲法第26条第1項で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する」と、規定されている。機会均等の意味は単純ではないが、問題は格差の是正だ。家庭の所得水準によって、子どもの進学率が異なること。家庭の所得水準によって、子どもの学力が異なること。経済的理由によって大学進学を諦める者が存在することを考えると、この部分は、すぐにでも解消する。格差の是正と教育の機会均等を図り、意欲ある人材を地域社会に送り出す。この視点が重要だ。

この点、本県では、一昨年の12月議会でも尋ねたが、山口県ひとづくり財団奨学センターが経済的理由により就学困難な大学生に無利子の奨学金貸与事業を行っている。

そこで先ず、この事業の、概要と実績について、示されたい。

先ほど述べたように、現状から考えるには、より向学心のある子どもたちへの大学教育への進路を保障するためには、奨学金の名による教育ローンではなく、子どもたちが安心して制度が活用できるよう、メニューや金額を充実させることや、返還免除の規定を弾力運用するなど、子どもたちの負担が、より少なくなるような工夫をすることで、一人でも多くの子供たちが、山口県に対する愛着や魅力を感じるようにすべきと考える。

そこで、今後、現在の奨学金貸与事業のより一層の拡充を図ることについて考えを尋ねる。

教育次長答弁

山口県ひとづくり財団の大学生に対する奨学金については、国の奨学金制度を広く補完する形で、無利子による奨学金を貸与するものであり、平成28年度においては、新たに195人、全体で714人の大学生等に年間約4億1千8百万円を貸与し、現在、総額で約33億円の奨学金を貸与しているところです。

 また、この奨学金制度については、これまでも、社会経済情勢の変化に対応した貸与額の見直しや、若者の定住促進に向けた「定住促進枠」による貸与額の増額を行ってきたところであり、さらに今年度、大学生等の県内定着・還流の一層の促進を図るため、定住促進枠の拡充を行ったところです。

 県教委といたしましては、今後とも、国における奨学金制度の見直し等の動向を注視しながら、経済的な理由により修学に不安を抱えた生徒が、一人でも多く進学できるよう制度の改善に努めてまいります。