新しい戦前に現実味と危機感~山口宇部空港の「特定利用空港」指定を糾弾する~
安倍政権が15年、憲法学者らの「違憲立法」との批判をよそに集団的自衛権の行使を認める安保法制を強行採決。
そして、政府・防衛省は、2023年8月25日に安保関連3文書に基づき、総合的な防衛体制の強化に資する取組について(公共インフラ整備)・・・「特定重要拠点空港・港湾(仮称)」を閣議決定している。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koukyou_infra/dai1/siryou2.pdf
これは、デュアルユース(軍民両用)のもとに、平時から空港等を軍事使用するという計画である(批判の強まりに対し、政府はなんと「特定重要拠点」から「特定利用」に言い換えた!)。
この目的は、「台湾海峡有事」という対中国戦争態勢づくりのために、琉球弧=第1列島線において、制海権・制空権を確保すること、そして合わせて「南西諸島」への全国部隊や膨大な規模の兵站物資の動員態勢づくりのためである。
ところが、政府は、この空港港湾の軍事化という明らかな事実を、「民間空港・港湾の災害時などでの活用」という詭弁のもとに、関係する自治体管理の空港・港湾についての「指定」を強行し始めた。(2025年度には特定重要拠点空港等に「道路」も指定)。
「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&A |内閣官房ホームページ
ことさらに台湾有事が煽られ、他国からの武力攻撃を受けた際に住民が避難できるシェルター(防空壕)を沖縄県の石垣市など5市町村に設ける工事が始まっている。このシェルター整備は、「国家安全保障戦略」において武力攻撃より先だって先島諸島(八重山・宮古)の住民や観光客を山口・九州に避難させるため、迅速な避難に困難性がある市において、一定期間避難可能で堅牢な施設として整備するとしている。
「有事体制」への住民の巻き込みは沖縄に限られたことではない。政府は自治体が管理する空港や港湾を「特定利用空港・港湾」に指定し、自衛隊などが好き勝手に活動できることを露骨に狙っている。港湾などが戦争の出撃拠点となったことの反省から、戦後はその管理の多くを自治体に委ねてきた。それをなし崩しにするものだ。
こうした、明らかな危惧を、何らの危機感も示さずに、「災害時にメリットがある」として、山口宇部空港を特定利用空港に受け入れた山口県知事の姿勢を断固糾弾する。
この間の山口県議会の動き
令和7年6月定例会 土木建築委員会議事録6月30日_(未定稿)
<特定利用空港にかかる質問・答弁等(中嶋委員)>
中嶋委員
内閣官房(8月25日)で、閣議・口頭了解されている内容が、港湾課のホームページにも示しされてい、その時に特定空港のことも、附属資料2というかたちで出されていますが、書いてあるのは、これはデュアルユース、要するに軍民両用の下に平時から空港等を軍事使用するという計画であると。
閣議は1回だけ開かれただけで、あとは申し送り事項だけの事務局会議が開かれて、今日御説明いただいた、4月1日の国のあれが、示されました。
この中で明らかになったのは、11空港が指定をされているけど、そのうち8は国管理の空港。県管理の空港は3つ、そのうち2つは福江空港と徳之島空港の離島と、藤本議員も本会議で質問されました和歌山県の南紀白浜空港、県営はこの3つが今指定されています。
そして次に山口宇部空港が候補にあがっているということのようです。
そこで急逝された和歌山県知事は、危惧があるじゃないかと。これに対して、県は照会してはどうかということですけれども、そういうことであるとか、香川県知事、高知県知事、沖縄県知事なんかの危惧についても、そういう情報は県としては把握しているから、国に照会するつもりはないという答弁だったと思いますけれども、まずこの点について、港湾課長としてどのような認識をお持ちか、お聞かせください。
港湾課長
議会での本答弁で申しましたとおり、高知県等において国に確認している内容については承知しているので、そのへんについて、改めて本県から国へ同様の確認をすることは考えていません。
中嶋委員
総合的防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議が8月25日に開かれ、示された資料の中に書いてあった、必要な空港・港湾等について、民生利用とのデュアルを前提としてと記載をされてあったものが、今年の4月1日に更新で、県が今日示した資料では、これがそっくり削除されていて、特定利用空港・港湾については民生利用を主としつつに変えている。
まさにこれは台湾海峡有事という対中国戦争体制づくりのために、琉球弧、第1列島線において、制海権、制空権を確保することという記載が、1回目の会合では盛り込まれている。そしてあわせて、南西諸島への全国部隊や膨大な規模の兵站物資の動員体制づくりのためであると、防衛省が説明している。
ところが、政府はこの空港・港湾の軍事化という、明らかな事実を、民間空港・港湾の災害時などでの活用という詭弁、物語をつくって、関係する自治体管理の空港・港湾の指定を強行され始めているということだと思う。
8月25日は、特定利用空港ではなくて、関係閣僚が出席の会議の中で言っているのは、特定重要拠点空港という仮称が明らかに打ち出されている。その後、マスコミとか軍事評論家の方々の批判を受けて、それはまずいだろうということで、特定利用空港という名前に12月に開かれた持ち回りの資料の中では変わっている。
こういう危惧があることについて、県として、もう少し詳しく県民の皆さんにも理解できるようにしないと、災害のためであるだけでは不十分ではないかと思う。
早速、北九州空港で築城基地の戦闘機F15がタッチ・アンド・ゴーの訓練をやったというニュースが飛び込んできて、びっくりしたけれども、さらに沖縄では、昔で言う、防空壕を造るという計画が、今、着手されているという報道もされている。
まさに、安倍政権が2015年9月に、憲法学者らの違憲立法との批判をよそに成立させた集団的自衛権行使を認める安保法制につながる。先ほど言いました8月25日は安保関連3文書に基づくいわゆる今回の総合的な防衛体制の強化に資する取組、公共インフラという流れの中で行われているということではないかと。
県としての今までの経緯の報告、そしてまた、宇部市の空港の地元関係団体との意見交換で概ね了解が得られているというような発言もあったように聞きました。そしてまた、この地元関係団体がどの団体かという問いに対して特に答弁がなかった。
疑問点に対して、お尋ねします。
港湾課長
県といたしましては、引き続き、市と情報共有を図るとともに、適時ホームページ等を通じて情報提供を行いながら、国が進めている本取組の主旨であるとか、地元関係団体の意見も踏まえて、空港管理者として適切に対応してまいるということです。
中嶋委員
部長が本会議で答弁されましたから、港湾課長としては答えようがないということかもしれませんけど、私はこういう問題は当部だけの問題ではないと思うんですよ。
8月25日の内閣府の官房長官が議長になりながら国交大臣も防衛大臣も文科大臣も農林水産大臣もあらゆる関係部署の大臣も一堂に揃われての会議を開かれて、閣議口頭了解をされた問題だと思うんですよ。
私も、いわゆる安保法制とか大風呂敷を広げましたけれども、こういう問題こそ当部だけではなく、庁内調整であるとか、よく県議会開会前には局議を開かれるという報告になってますけれども、そういう中で熟議がされて、今後どうされるとされているのか、その点についてお尋ねです。
港湾課長
国が進める特定利用空港・港湾の取組は、自衛隊・海上保安庁が、平素から必要に応じて空港・港湾を円滑に利用できるよう、インフラ管理者との連絡・調整を設けるものであります。
このため、山口宇部空港の管理を所管する土木建築部といたしましては、関係部局とも連携しながら、慎重に対応を検討しているところです。
中嶋委員
8月25日の付属資料2によると、円滑な利用に関する枠組みを設けることにより、有事のみならず平時においても円滑な利用を確保するという文言があったんですけれども、今日報告された資料はこの部分がそっくり抜け落ちている。
だから、国に照会していただかないと、私たちだけでなく、県民の皆さんが危惧されることは解決できないんじゃないかと思いますので、最後に、なんでこういうことまで照会されないかをお尋ねします。
港湾課長
有事の際も利用されるおそれがあるのではないかといったお話だろうと思いますけれども、国からは、この取組は有事の利用を対象とするものではなく、あくまで民生利用を主とし、また、空港に新たに自衛隊の基地であるとか駐屯地を設置するといったことはないというふうに説明を受けているところです。
| 総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議 R5.8.25 | 公共インフラ整備の取組の基本的な考え方 R7.4.1更新 |
| 安全保障環境を踏まえた必要な対応を実効的に行うため、南西諸島を中心としつつ、その他の地域においても、必要な空港・港湾等について、民生利用とのデュアルユースを前提として、 自衛隊・海上保安庁の艦船・航空機が利用できるように、整備又は既存事業の促進を図る。
○併せて、自衛隊・海上保安庁が、平時から円滑に空港・港湾等の利用ができるよう、インフラ 管理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」を設ける。 ○上記を満たす施設を、特定重要拠点空港・港湾(仮称)とする。 |
○安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うため、南西諸島を中心としつつ、その他の地域においても、 自衛隊・海上保安庁が、平素から必要な空港・港湾を円滑に利用できるよう、インフラ管理者との間で 「円滑な利用に関する枠組み」を設ける。これらを、「特定利用空港・港湾」とする。
○「特定利用空港・港湾」においては、民生利用を主としつつ、自衛隊・海上保安庁の艦船・航空機の 円滑な利用にも資するよう、必要な整備又は既存事業の促進を図る。また、平素から円滑な自衛隊の 人員・物資輸送等に資するよう、「特定利用空港・港湾」と自衛隊の駐屯地等とのアクセスの向上に向 け、道路ネットワークの整備を図る。 |
| 【整備】 ○空港の滑走路延長・エプロン整備や港湾の岸壁・航路 の整備などを行う。
○円滑な利用に関する枠組みを設けることにより、有事のみならず平時においても円滑な利用を確保する |
【整備】 ○空港の滑走路延長・エプロン(駐機場)整備や 港湾の岸壁・航路の整備、道路ネットワークの整備 などを行う。 |
| 【既存事業の促進】 ○自衛隊・海上保安庁の早期かつ円滑な利用に資するよう、既存の整備計画を活用し、整備の促進や追 加工事の実施を行う。
○円滑な利用に関する枠組みを設けることにより、有事のみならず平時においても円滑な利用を確保する。 |
【既存事業の促進】 ○既存の整備計画を活用し、整備の促進や追加 工事の実施を行う |
R5.8,25に、関係閣僚が出席の上で、閣議了解したものを、国民に真の意図を隠すために事務局で修正して公表
2025.10.1 土木建築委員会質問
- 特定利用空港について
〇今回請願が出されている市民団体に対し・・・
7月25日の【山口宇部空港の「特定利用空港」指定を拒否することを求める要請書】への回答交渉が7月25日県庁で行われましたが、対応された港湾課長ほかの担当者の答弁は、
①県では地元関係団体に丁寧に説明を行ってきたところであり、一般市民が参加できる説明会の開催を国に求める考えはありません。
② 県としては、山口宇部空港について地元宇部市と情報共有を図りながら、国が進めている本取り組みの趣旨や地元関係団体の意見も踏まえ、空港管理者として適切に対応してまいります。
そして、地元関係団体とは山口宇部空港騒音公害対策協議会で、6月11日に説明を行い7月22日に要望を含めた回答をもらっていると明かしましたが、この協議会の役員などや、その回答内容については答えられない。情報公開請求をしてもらわなければここでは言えない。でした。
先ずは、何故、情報公開請求してもらわなければ答えられなかったのか、お尋ねです。
答弁・・・第3者に関する情報が含まれて・・・(意味不明)
〇次に、開示請求によって、ようやく開示された文書に基づき、お尋ねです。
・R6.12.25…宇部市長が港湾課から確認依頼のあった3項目への回答文書で、「現時点では騒音協、地元漁協、岬・恩田・常磐地区(小学校区)の自治会連合会、空港隣接自治会の代表者等を想定している。」とあるが、この点への対応はどうしたのか。
答弁・・・市のことで、答えられない。
・R6.10.11…WEB併用で、内閣官房・国交省・防衛省の担当と、県は土木建築部長ほかの出席で開催した、「総合的な防衛体制の強化に資する取り組みについて『公共インフラ 正式説明』質問・確認事項」なる文書によると・・・、県は、多岐に渡って国に質問・確認を求め、国は回答している。
例えば、
*県の「弾道ミサイル対処での利用とはどういう場合か、航空機が発進等する場合があるということか」に対し、国は「弾道ミサイル等に対する破壊措置が必要な場合等に、PAC-3部隊を展開場所に輸送するための利用を想定している」と回答。また、「PAC-3部隊の展開を国は特定利用空港で実施した例がある」とも回答。
*県の、「航空機の離発着・停留・給油作業等以外の利用があるのか」に対し、国は「滑走路上で航空機を安全に停止させるために必要な着陸拘束装置(機動バリア)を利用した着艦訓練が想定される」と答弁。
そこで、 山口宇部空港での着陸拘束装置の使用は断固拒否すべきだと質すも、「国から現時点で具体的な訓練の計画は示されていないため答える状況にない」と答弁。
「着陸拘束装置を使う、弾薬を含むPAC-3部隊を空輸で輸送するなどは軍事目的での使用そのものだ」、山口宇部空港の特定利用空港指定は拒否すべきだと質すも、「この取り組みは有事の利用を対象とするものではないとされている」と答弁
さらに問題は、(案)として、「山口宇部空港における空港の施設の円滑な利用に関する確認事項、3項目が、すでに、示されている。
他に開示された文書には、このような文書は無いので、これが、県への最初で最後の国政府からの正式説明会だったのか。伺う。
答弁・・・国とのやり取りは、この回のみである。
・R7.1.22…宇部市への説明会が県庁で(内閣官房・国交省・防衛省と、宇部市長外に県土木建築部長ほかの出席で)、WEBで行われ、さっき言った、確認事項、3項目(案)が示されている。この段階で、宇部市は正式同意し、市民のことは削除されているようだが、この間の経緯が分かれば説明してください。
・R7.6.11・・・騒音協執行委員会結果文書には、「日没後の訓練は行わないでほしい」、「災害対応を想定するのであれば戦闘機ではなく輸送機での訓練が妥当ではないか」等との要望を県は受けているが、また、R7.7.22…騒音協会長名で知事宛てに、文書で、「やむを得ない」が3項目の要望事項を付しておられる。
これへの対応について、どうだったのか、伺う。
・結局、R7.7.30・・・内閣官房他から知事あてに「総合的な防衛体制の強化のための公共インフラ整備について(依頼)」の文書を受け、R7.8.7・・・知事名で、「訓練は日没後は行わないこと」など6項目の要請を付して文書回答。
R7.8.29・・・確認事項。3項目を交わしている。
るる述べた、要望・要請事項は、無視されているが、今後どう対応するというのか。伺う。
・つまるところ、開示された「総合的な防衛体制の強化に資する取り組みについて「公共インフラ 正式説明(R6.10,11)」質問・確認事項なる文書で、17項目の県からの質問・確認事項に対する国の回答で、県としては、はなから山口宇部空港を特定利用空港として受け入れると決めていたのではないか。との疑念が深まるばかだが、どうだったのか、尋ねます。
〇「ジュネーブ諸条約第1追加議定書 第四編 文民たる住民 第48条基本原則では、「自衛隊が使用するだけで軍事目標とされ、攻撃対象となることから、特定利用空港の受入れを撤回すべき」だと質しても、「国は特定利用空港・港湾となった後も自衛隊・海上保安庁による平素の利用に大きな変化はなく、そのことのみによって、当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとは言えないとしており、県としては受け入れを撤回することは考えていません」との答弁の繰り返しばかりで、到底納得しがたい。
〇特定利用空港の指定に関し、総花的な「3項目からなる確認事項」だけでは県民の不安・懸念はぬぐえない。現在の「山口宇部空港供用規程」では、到底対応しきれるわけがないので、最低限、自衛隊・海上保安庁の平素における運用や訓練等に関する具体的な「空港使用協定」を結ぶべきではないか。伺う。
答弁は・・・「訓練は日没後は、行わないよう、引き続き国に要請し続ける」だけで、
「国から現時点で具体的な訓練の計画は示されていないため答える状況にない」と、また、「山口宇部空港の特定利用空港指定は拒否すべきだとのお尋ねですが、この取り組みは有事の利用を対象とするものではないとされており、撤回することは考えていません」・・・の繰り返しに終始。
●土木建築委員会の2日目に、委員会に付託されていた、「山口宇部空港の特定利用空港指定に反対する請願」の採決がありました。
採決の前に、副委員長が、自民党会派を代表してとし、「国からは特定利用空港の取組は、武力攻撃事態のような有事の利用を対象とするものではないと説明がされており、あくまでも平素における空港の利用を対象としたものであることから、請願の指摘はあたらない」と、不採択とすべきだとの意見を述べました。
続いて、私から、「本請願は、軍事的な抑止力や対処力を高めることを通して、防衛体制の強化を図ろうとするもので、紛れもなく軍事化・軍拡の一角を構成するものであり、専守防衛を踏み越える憲法違反の疑いが高いものでもあることから、県議会として反対の意思を表明すべきとの請願です。
昨日、私は、この立場から9項目について質問をしましたが、ただ、『自衛隊等の訓練は日没後は行わないよう、引き続き国に要請していく』と言うだけで、県としては受け入れを撤回することは考えていない。との答弁でした。
従って、本請願を採択すべきであり、委員先生方にもお願い申し上げます。」と、賛成の意見を主張しました。
採決の結果は、委員長を除く6委員の賛否は1対5で、本請願は委員会では、不採択となりました。残念です。
本会議最終日の採決での賛否は・・・
◎賛成…社民党1・共産党3・草の根1 の5県議
