3 生活保護について

12月山口県議会質問&答弁

生活保護は、セーフティーネットの最後のとりでです。

日本の貧困率は、バブル崩壊以降、非正規雇用の増加や高齢化などにより、継続して悪化を続けています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2021年に相対的貧困率は15.4%、30年前より1.9ポイント高くなっており、アメリカ、イギリスと比べても経済格差が大きくなっています。

山口県のホームページで生活保護を検索すると、以下のように書いてあります。

生活保護制度とは、国の定める基準に従って私たちが最低限度の生活ができるように保障するとともに、自立した生活を送ることができるように支援する制度です。
私たちは、生活していく中で、病気やケガで働けなくなったり、年金などの収入がある人が死亡したり、様々な事情で生活に困ることがあります。
生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにお住まいの市町を所管する福祉事務所までご相談ください。とあります。

県内の生活保護の現状などについて、以下4点について伺います。

雇用形態の多様化や新型コロナ感染症の影響等により、低所得世帯が増加していると考えます。生活保護受給世帯の動向などからも、そのような実態が顕在化していることが把握できるのか伺います。

群馬県桐生市において、生活保護費を1日1,000円ずつケースワーカーから手渡すだけで、月の決定額の半分程度しか支給しなかったという事案が報道されました。こうした例も含め、本県において受給者の人権侵害等の問題事案の発生状況について伺います。

県内には13市と周防大島町に福祉事務所があり、東部社会福祉事務所で県は4町の生活保護業務を所管していますが、生活保護担当者はストレスにさらされ、また担当する実務の経験も少ないことから、専門性を保つためには研修の充実が重要と考えますが、市町担当者も含め、研修の現状と今後の方針について伺います。

生活保護世帯においても、通勤や通院、就職活動など、公共交通機関が不便なため、自家用車の保有が必要な状況は多いと考えます。県内の生活保護世帯における自家用車の保有の状況と、県の取扱基準について伺います。

健康福祉部長答弁・・・

生活保護についての4点のお尋ねにお答えします。

まず、生活保護受給世帯の動向についてです。

県内の保護率は、近年ほぼ横ばいで推移しており、世帯数、人員はともに減少傾向にありますが、その要因については、景気動向や雇用情勢など様々な要因が複雑に関係しているものと考えられます。

次に、本県における受給者の人権侵害等の問題事案の発生状況についてです。

担当職員による不正等が発生した場合は、国に報告を求められており、過去10年間では、令和5年度に1件、国に報告しているところです。

次に、生活保護担当者に対する研修についてです。

生活保護担当職員については、各福祉事務所において研修を行うとともに、県としても、県内福祉事務所の担当職員を対象に実務経験や担当業務に応じた研修の実施や、国が主催する研修会への派遣等を行っており、引き続き、こうした取組を通じて担当職員の資質向上を図ることとしています。

次に、県内の生活保護世帯の自動車の保有状況等についてです。

令和4年度末時点において、県内の福祉事務所が保有を容認している自動車の件数は63件となっています。

また、自動車については、国が定めた基準に基づき、各福祉事務所において、保有容認の可否等を判断しているところです。

これは11月27日のNHKの報道で知ったんですけれども、生活保護について生活保護の家族介護料加算の支給漏れが堺市で発覚。これは利用者からの指摘を受けて発覚したようです。堺市は5年間遡及して支払うという対応をされました。生活保護は憲法25条が定める生存権の保障のために行う制度で国が責任をもって行うべき法定受託事務とされています。だからこそ支給費の3/4は国庫負担となっています。そういうことでありますので、堺市の例でいきますと堺市の報道発表によれば、堺市のそれぞれの区役所の担当で解釈の違いがあってこういうことが起きたということになっています。なかなか生活保護は非常に難しいことで、担当される職員、私も公務員やっていましたので、まじめな職員の方ほど、まじめに取り組まれて、なんとか取り上げなければいけない、これは何とか給付の対象にならないかなど、非常にタフな仕事をされており、メンタルになっている方もたくさん知っています。そういう面でこういうことがないように、やはり県がそういうことがあった度に、県として独自にこのような県内各所がこれまでこのような加算の適用をどのような判断で実施されてきたのか実態を調査すべきではないか、あるいは、このようなケースについては、慎重に取扱うようにというような技術的助言をされるべきではないかということをお尋ねしたいと思います。

そして車の保有なんですが、先程部長からご答弁いただきましたけれども、63件の保有があるということでした。

昔はたぶんエアコンとかそういったものも贅沢品というか設置が認められていなかったのですけれども、気象状況とか一般世帯の中で普及してきているということ、昨今は熱中症でエアコンを是非付けて下さいよと、国も推奨しているという状況で今は認められていると思います。車についても一般世帯との均衡ということであれば当然車の種類とかにもよると思いますけれども、保有は必要だと思います。現状やはり要領とかは国にあるという先程のご答弁いただきましたけれども、担当によって取扱いが統一的なものではないといったことも私の耳に入ってきておりますので、そういう点も踏まえて、今後どうされていくのか、方針がありましたらもう少し詳しくご答弁お願いしたいと思います。

生活保護についての再質問にお答えします。

まず、加算の適用について、実態調査や助言をすべきではないかというお尋ねだったかと思います。生活保護は、法定受託事務として、国の通知等に基づき、実施機関である各福祉事務所において、各世帯の実情を踏まえ、加算の適用の可否を判断されているものと承知しています。

県といたしましては、各福祉事務所に対し、定期的に事務監査を実施し、適正な事務処理が行われているかについて、確認を行っているところであり、実態調査を行うということは考えておりません。

次に、自動車の保有の取扱いが統一的ではないと聞いているが、どうするのかというお尋ねだったと思います。各福祉事務所において、国の定める基準において、各世帯の実情を踏まえ、保有の可否等を判断されるべきものと考えています。

県といたしましては、今後とも、各福祉事務所に対し、定期的に事務監査を実施し、適正な事務処理が行われているかについて、確認を行うこととしています。


4 介護・福祉人材確保について

12月山口県議会質問&答弁④

介護・福祉の人材不足が言われて久しくなっています。

今年度(2024年度)から26年度の第9期介護保険事業計画に基づく、本県の介護人材不足状況は2026年度▲2646人・不足率8.5%、2040年度▲2712人・不足率8.6%となっています。

介護需要に応え、かつ介護保険制度を維持継続していくためにも、人材の確保が重要です。そこで伺います。

県内の高齢者・障害者施設において、職員不足に起因し、利用者を定員上限まで受け入れることができない状況が生じている実態はあるのか、現状について伺います。

高齢者・障害者施設における人材不足について、現状と将来的な見通しについて伺うとともに、人材確保に向けては奨学金の拡充などの支援策が重要と考えますが、知事の所見を伺います。

施設職員の離職を防止するためには、県が民間の介護福祉士養成施設等に委託し、職員の能力向上や他の施設職員との交流等を通じて専門性を高めるための研修を実施し、職員のやりがいを高めるための取組を実施してはどうかと考えます。

施設を超えた職員間の交流の機会が減っているとも聞いています。能力向上に加え、同じ地域で働く職員として交流することも有意義であると考えますが、研修の実施について知事の所見を伺います。

関連して、人手不足の介護や福祉の高齢者施設や障害者施設などでの健康保険証廃止後のマイナ保険証移行に伴う12月2日以降の県の対応について伺います。

健康福祉部長答弁・・・

介護・福祉人材確保についての数点のお尋ねにお答えします。

①まず、高齢者・障害者施設の利用者の受入状況についてです。

定員上限まで受け入れることができない状況が生じている高齢者施設等からは、職員不足が要因となっているという声も聞いています。

②次に、高齢者・障害者施設における人材不足の現状と将来的な見通し及び人材確保に向けた支援策についてです。

人材不足について、高齢者・障害者施設に限った推計はありませんが、介護・福祉分野の人材不足が続くものと見込まれています。

そのため、県では、介護福祉士養成施設等の学生に対する修学資金の貸付や、県福祉人材センターを通じた職業紹介など、人材確保に向けた様々な取組を進めています。

③次に、施設職員への研修については、県社会福祉協議会への委託により、県内施設の職員を対象としたキャリアアップや職種・経験に応じた専門性向上のための集合研修をセミナーパークで定期的に開催しており、人材の養成及びその定着を図っているところです。

④次に、健康保険証廃止に伴う県の対応についてです。

県としては、あらかじめ、高齢者及び障害者施設に対して、高齢者や障害者がマイナ保険証等を利用するに当たっての国のマニュアル等を周知したところであり、今後も引き続き適切に対応してまいります。


5 困難女性支援法の施行について

12月山口県議会質問&答弁⑤

令和6年4月1日より「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されました。

県では、法に基づき「施策の実施に関する基本的な計画」を3月に策定され、「女性をめぐる課題は、生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻など、複雑化、多様化、複合化しており、また、コロナ禍によってこれらが顕在化したことから、こうした困難な問題を抱える女性への支援は極めて重要です。」とされています・

計画の推進や進捗確認、評価等を総括するのは環境生活部男女共同参画課と承知していますが、市町・関係機関との連携や庁内の各担当部局との役割分担について伺います。

村岡知事答弁・・・

中嶋議員の御質問のうち、私からは、困難女性支援法の施行に関して、市町・関係機関との連携や庁内の各担当部局との役割分担についてのお尋ねにお答えします。

女性を巡る課題は、複雑化、多様化、複合化しており、これまで以上に、相談から保護・自立支援までの専門的な支援を包括的に提供するとともに、県、市町、警察、関係機関、民間団体が連携、協働した、早期かつ切れ目のない支援が重要と考えています。

このため、県や市町の女性支援関係部局及び福祉、医療、法律、民間シェルター等の関係機関・団体で構成する「支援調整会議」を新たに設置し、支援施策や実施状況の共有を図るとともに、個別ケースの支援方針の検討に当たっては、医師や弁護士等の専門家の助言が得られるようにしています。

また、男女共同参画相談センターを中核として、女性への相談対応等に当たっているところであり、支援内容は、福祉、保健医療、子育て、住まい、教育等、分野が多岐にわたることから、庁内の各担当部局と連携して、必要な支援に取り組んでいます。

私は、今後とも、市町や関係機関、民間団体等と緊密に連携・協働しながら、困難な問題を抱える女性一人ひとりの課題や背景、心身の状況等に応じた最適な支援が実施できるよう、しっかりと取り組んでまいります。

新たに策定された県計画は、困難な問題を抱える女性に対する県の女性福祉、人権擁護、男女平等等の新たな指針として包括的に推進することとなります。

県民全般への周知と理解促進は特に重要となると考えますが、具体的な進め方の方策等を伺います。

支援の中核となる男女共同参画相談センターは、支援対象が広範となり、支援内容も拡大することを踏まえると、機能強化を図るべきと考えますが、業務や組織体制の見直し方針について伺います。

困難女性支援法の施行により生活支援等を含む女性の支援範囲が広くなるため、自立支援を担う女性自立支援施設の役割が重要となってきます。

今後、相談や入所者の増加が予想されますが、入所者への社会生活自立に向けた支援に、県としてどのように取り組んでいくのか伺います。

県内市町においては、女性相談支援員の配置状況や民間支援団体の有無等について、地域格差が存在をしています。

当事者に最適な支援を提供するための体制整備が不十分な市町や民間支援団体に対して、県が積極的な支援を行うべきと考えますが、所見と具体的な支援策を伺います。

環境生活部長答弁・・・

困難女性支援法の施行についての数点のお尋ねにお答えします。

まず、県民全般への周知と理解促進の進め方についてです。

県では、相談窓口や支援制度に関するリーフレットやカード等の公共施設等への配布や、インターネットなど様々な媒体による広報、啓発用パネルの展示、県政出前トークなどに取り組んでいます。

次に、男女共同参画相談センターの業務や組織体制の見直しについてです。

 困難女性支援法の公布等を受け、相談件数の増加への対応や入所者への支援充実のため、女性相談支援員や生活支援員を増員するとともに、医学的又は心理学的な援助を行うため、心理職の常勤職員や精神科の嘱託医を新たに配置したところです。

次に、入所者への社会生活自立に向けた支援についてです。

困難な問題を抱える女性が、地域で自立して生活できるよう、市町や関係機関と連携し、医学的、心理的支援、生活支援、就労支援、居住支援等を実施しています。

また、施設退所後、すぐに自立生活に移ることが難しい女性等を対象に、心のケアや自立に向けた準備をするためのステップハウスを民間団体と協働で運営し、社会生活自立に必要な支援を行っています。

次に、市町や民間支援団体に対する支援に係る所見と支援策についてです。

県では、相談に的確に対応できる体制を整備するため、市町に対し、各市町の取組の情報共有や、相談業務に関する研修会を実施するとともに、市町からの求めに応じ、男女共同参画相談センター職員や女性相談支援員をアドバイザーとして派遣し、指導・助言を行っています。

また、女性に寄り添ったきめ細かな支援を実施するため、民間団体の豊富な知見とノウハウを活用して、SNSやメール相談、ステップハウスの運営など全県的な支援に協働して取り組んでおり、引き続き、民間団体の自主性を尊重しつつ、協働の取組の充実に努めてまいります。

 県計画の概要を見させていただくと、10市には女性相談支援員が配置されているという記載がある。人口規模が小さい市町については、専任の相談支援員の配置は厳しいのは理解できる。先程の部長の答弁では、県がアドバイザー等を派遣されているとのことだが、直接の支援という事が調整会議の他に必要ではないかと思うが、改めて伺う。

困難女性支援法の施行についての再質問にお答えします。

女性相談支援員を設置していない市町に対して、県が直接の支援をすべきではないかという趣旨のお尋ねだったと思います。

先程、答弁させていただいておりますけれども、県としましては、市町からの求めに応じまして、県が配置しております、男女共同参画相談センター職員や女性相談支援員をアドバイザーとして派遣し、女性相談支援員を配置していない市町に対して、指導・助言を行っておりまして、県としましては、市町に対して直接支援をしているというふうに考えております。
TEL(相談専用)083‐901‐1122


6 公契約条例の制定について

12月山口県議会質問&答弁⑥

 公契約条例とは、自治体が発注する公共工事・業務委託等に従事する従事者の賃金・報酬下限額を設定し、自治体・受注者の責任等を契約事項に加えることを定めた条例です。日本は残念ながら批准していませんが、ILO、国際労働機関、第94号条約に基づいています。

2009年9月、全国で初めて千葉県野田市で公契約条例が制定され、本年1月時点で、全国86の自治体で制定されています。適正な賃金・労働条件が質の高い公共サービスを生み、税収などに跳ね返り好循環を生み出す、公契約条例の制定に向けお聞きします。

県が行う公共事業などの公契約について、企業の育成と従業員の適正な賃金水準確保のため、公契約条例の整備が必要であると考えます。

特に賃上げの流れが強まっている今、本県においても公契約条例の導入を検討すべき時は今だと考えますが、知事の所見を伺います。

会計管理局長答弁・・・

公契約における適正な賃金水準等の確保は、労働・雇用環境の改善につながる重要な課題と認識しています。

このため、県としては、公共事業に係る労務単価の見直しを毎年実施し、工事の受注者等に対して適切な額による賃金の支払い要請を行うとともに、最低制限価格制度や低入札価格調査制度の運用など、適正な賃金水準等の確保に努めているところです。

お尋ねの「公契約条例」の制定については、多様な職種を網羅する賃金水準を、自治体が独自に設定することや、同一企業内の同一職種において、公契約に従事する者としない者との間に賃金格差が生じるなど、様々な課題が指摘されています。

また、国の「公契約法」制定に係るこれまでの議論においても、賃金等の労働条件は、関係法令に反しない限りにおいて、労使が自主的に決定するものであることから、賃金等の基準を新たに設ける「公契約法」の制定については、慎重かつ幅広い観点からの検討が必要とされています。

こうしたことから、「公契約条例」の制定について、県としては、労働関係法制を所管する国の動向等を、引き続き、注視していくこととしています。