公共交通の維持について

2022.6.15一般質問

バス、鉄道、タクシー、船等の公共交通機関は、国民の移動する権利を保障するためになくてはならないものです。

しかし、2020年に国内で新型コロナウイルスが蔓延し始めるとその感染症対策として、不要不急の外出自粛が呼び掛けられ、さらに蔓延防止等重点措置、緊急事態宣言が発出されることで強い要請となり、公共交通機関の利用促進と感染症対策が、ますます相容れない状況となってしまいました。

 もともとビフォーコロナの折から地方の公共交通機関は苦戦を強いられ、その維持存続のために大きな壁にぶつかっていました。

地方では公共交通が無くなれば地方が衰退し、地方が衰退すればさらに公共交通が衰退し、まさに負のスパイラルに陥っています。

 そのような中で「改正地域公共交通活性化再生法」は、地方自治体による地域公共交通計画の作成を努力義務化し、この問題に対し地方自治体にも対策議論が求められています。

 本県でも、「新たな地域交通モデル形成に関する取組方針」が検討委員会で議論され、昨年3月に策定され、今年3月に改訂されていますが、まさに課題山積の様子が窺われます。

加えて、新型コロナ感染症対策として移動を抑制せざるを得ない中で、公共交通機関に与えた影響は計り知れないものがあるのはご案内の通りで、県は燃料価格高騰もあり、厳しい経営状態となっている県内公共交通事業者の運行継続に対して、昨年の11月補正予算で、約6億7千万円の事業費を計上し、支援を行うことで公共交通の維持・活性化を図られました。また、本議会でも本年度補正予算案に7億6百万円を計上提案しています。金額の多寡は別として、県のこのような施策に対しては評価をしています。

しかしながら、JR西日本の長谷川社長が昨年来さかんに「輸送密度2千人未満は非効率、路線見直し」などをマスコミに発信し、4月11日には同社単独では路線の維持が困難としているローカル線の収支を公表、山口県内5路線・6区間が該当し大問題になっています。

 そこでお尋ねします。

 このJR西日本の収支公表に対して、①廃線やさらなる減便の布石となりかねないとの懸念。②沿線市町と連携した対策の必要性。③該当路線の利用促進に向けた県の具体策。④そもそも国鉄を分割民営化した国の責任。などについて県としてどう具体的に対処していかれるつもりか、お聞かせください。

その上で、⑤県内の公共交通機関はビフォーコロナからも構造的な課題を持ってきましたが、長期にわたるコロナ禍で、公共交通事業者は、事業継続のため塗炭の苦しみを味わっています。そのような中で、今まであまり議論の対象となっていなかった今回の鉄道も含め、県は今後どのように将来の公共交通の姿を描き、公共交通の維持・活性化を図ろうとするのか、お聞かせ下さい。

観光文化スポーツ部長答弁…

県内公共交通の維持についての数点のお尋ねにお答えします。

まず、JR西日本の収支公表が、廃線やさらなる減便の布石となりかねないとの懸念への対応についてです。

地方ローカル線は広域的なネットワークとして維持されることが必要であり、区間毎の収支のみで存廃が判断されることは適当でないと考えています。

このため、県としては、国に対して、地域の実情を反映できる鉄道廃止等の手続きへの見直しや、鉄道事業者の経営基盤安定化への支援等について要望するとともに、JR西日本に対しても、地方ローカル線存続の必要性を訴えているところです。

次に、鉄道の沿線市町と連携した対策の必要性及び該当路線の利用促進に向けた県の具体策についてまとめてお答えします。

県としては、鉄道の維持・活性化を図るためには、沿線市町と連携した取組が重要と考えています。

このため、各路線に設置された利用促進協議会等と連携を図りながら、一層の利便性向上や日常利用の促進に向けた機運醸成、さらに観光利用につながるプロモーションなど、様々な取組を沿線市町と一体となって進めることとしています。

次に、国鉄を分割民営化した国の責任を踏まえた対応についてです。

県としては、国鉄改革時の経緯も踏まえ、交通政策の根幹としての鉄道ネットワークのあり方について、国として、その方向性を提示するよう求めているところです。

次に、今後の公共交通の維持・活性化についてです。

県では、これまで、県民生活の重要な基盤である公共交通の維持・確保を図るため、複数市町に跨る幹線バス路線への支援や、中山間地域等におけるデマンド型乗合タクシー等、地域の実情に応じた公共交通への支援を行ってきたところです。

こうした取組に加え、多様化する地域公共交通の課題解決を図るため、様々な視点からの取組を推進するための方針を策定したところであり、これに基づき、交通空白地の移動手段の確保や公共交通情報のデジタル化など、新たな取組を一層促進することとしています。

県としては、今後も国や市町、交通事業者等との連携を密にし、地域住民の日常生活に不可欠な地域公共交通の維持・活性化に取り組んでまいります。